子宮頸がんは数少ない〝予防できるがん〟…死亡率は全国4番目、罹患率も8番目に高い県、医師は若年層へ早期受診とワクチン接種を呼びかける

2025/03/16 20:47
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 鹿児島県は子宮頸(けい)がんの死亡率が高い。2022年人口動態統計によると死亡率は全国で4番目に高く、20年の全国がん登録の罹患(りかん)率も8番目に多い。県は25年度から、若年層の子宮頸がん検診率向上のための啓発活動に取り組む。

 県産婦人科医会理事で、鹿児島大学病院産科婦人科の小林裕明教授(64)は「予防できるがん。検診やワクチンなどで確実に防いでほしい」と呼びかける。

 子宮頸がんは性的接触によるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が主な原因で、30~40代での発症が多い。国内では年間約1万人がかかり、約3000人が命を落とす。人口動態統計によると、県内の人口10万人当たりの死亡率は15年以降、全国平均を上回る。

 早期発見すれば5年生存率は90%以上といわれる。検診が欠かせないが、県内の受診は伸び悩む。22年の国民生活基礎調査によると、県内の20歳以上の受診率は40%。中でも20代は30%にとどまる。小林教授は「死亡率の高さは受診の早さの差」と語る。「早期は症状がない。特に鹿児島は病状が進行してからの受診が多い。20歳から検診を受けてほしい」と話す。

 検診とともに予防に有効とされるのが、HPVワクチンだ。公費接種は小学6年生から高校1年生の女子が対象で、3回受ける必要がある。2、4、9価の3種があり、9価ワクチンの接種で約9割の子宮頸がん発症につながるHPV感染を予防できるとされる。

 免疫疾患や神経学的疾患などの有害事象が報告されたが、小林教授は「ワクチン成分との因果関係は証明されていない」と指摘する。「予防する方法のあるがんは珍しい」とし、「不正出血など少しでも変化があれば受診を、予防として検診やワクチンを検討して」と訴える。

◇県、秋以降に大学や専門学校へ検診車派遣

 県は秋以降、大学や専門学校などに検診車と子宮頸がんの専門家を派遣する計画。講話の後、希望者は無料で検診を受けられる。

 県が取り組む「がん克服総合推進事業」の一環で、主に20歳以上の学生を対象にする。検診は子宮入り口の細胞を専用ブラシで採取する。顕微鏡で異常な細胞がないかを調べ、後日結果を連絡する。

 初年度は2カ所での実施を考えており、1回50人程度の受診を想定しているという。県健康増進課は「30代から増えるがん。早期に見つければ生存率は高い。定期的な受診に向けて、意識を高める一助になれば」としている。

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