日本タイトルマッチに向けてトレーニングする大久祐哉=東京都世田谷区
ボクシング・日本フェザー級1位の大久祐哉(おおく・ゆうや)=28歳、鹿児島市出身=が25日、初の日本タイトルマッチに挑む。鹿児島商業高校の同好会で競技を始め、会社員を経てつかんだ挑戦権。不屈の精神でプロへの道を切り開いた「薩摩のぼっけもん」は「下馬評を覆して必ずベルトを取る」と意気込む。
右利きの大久は、パーソナルトレーニングで鍛え上げたフィジカルを武器とし、攻守のバランス感覚に優れる。ジャブで間合いをつくり右ストレートで相手を仕留めるのが必勝パターン。「(パンチを的確にヒットさせる)『当て感』に自信がある」と話す。
小学3年から少林寺流空手を習い、高校の同好会でボクシングを始めた。専門的な指導者はおらず、用具もグローブ2人分、パンチングミット1セット、壊れかけたサンドバッグがあるだけ。空き教室で数人のメンバーとともに“自己流”の練習を重ねた。
高校最後の九州総体で優勝、全国総体で16強入りするなど実績を残し、強豪の中央大に進んだ。1学年上の岡澤セオン(29)らと汗を流し、4年時の国体で5位入賞。卒業後は東京の人材紹介サービス会社に就職した。
ただ、ボクシングへの思いは簡単に諦めきれなかった。社会人1年目の2019年、全日本社会人選手権に出場して優勝を飾る。会社を辞め、トレーナーなどのアルバイトをしながらプロを目指すことを決意。金子ボクシングジム(東京)に所属し、21年5月のプロテストに合格した。
プロ通算成績は10戦8勝(5KO)2分。デビュー戦で圧巻のKO勝ちを収めたが、2戦目は引き分けに終わった。「3ラウンドのアマチュアと、6ラウンドのプロの違いを肌で感じた。負けた気分だった」。悔しさを味わい、一層練習に打ち込むようになった。
今回対戦する現王者・松本圭佑(大橋)はプロ12戦全勝で4度の防衛に成功している。ジュニア時代から活躍するエリートだが、「勝てばベルトも世界ランクも奪える。泥臭く戦う」と、“雑草魂”で対抗する覚悟だ。
目標である日本王者、世界王者の先に「鹿児島にボクシングジムを建てたい」との夢を描く。当日は地元関係者の大声援を背に、聖地・後楽園ホールのリングに立つ。