〈資料写真〉2023年11月3日、おはら祭でそろいの法被を着て踊る「世界平和統一家庭連合鹿児島」の踊り連=鹿児島市
「解散は当然」「被害者救済につなげて」。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への25日の解散命令決定を受け、鹿児島県内では東京地裁の判断を評価する声が聞かれた。ただ、霊感商法や高額献金が指摘される教団の実態を変えることができるかは見通せず、懐疑的な意見もあった。
韓国での合同結婚式に参加した旧統一教会の信者を兄に持つ県内の60代女性は「信者がいる限り、献金などの問題も続くのではないか。数年したら信者が再び集まって違う組織ができると思う」と指摘した。
兄は祖母ら親族数人に「困っているから助けて」とつぼを売っていたという。「一つ10万円はしていたはず。自分に迷惑がかかったことはないが、献金できなければ土地などを取られないかと気にする家族もいた」と振り返った。
鹿児島市の女性教員(42)は「ようやく、やっと、という感じ。安倍晋三元首相の銃撃事件がなければ、教会のことを知る機会はなかった。今もずるずる苦しめられている人がいることを思うと、救済に向けた一歩になる」。霧島市の自営業の女性(45)は「宗教2世とされる子どもたちが強制的に入信させられるなど、信教の自由の観点からも間違っていた。解散命令は子どもたちのためにも良かった」と評価した。
鹿屋市の団体役員の男性(75)は「憲法で信教の自由が保障されている以上、判断が難しかったと思う。本来、宗教団体へ解散命令など出すべきではない」とした上で、「被害を訴える人が多数いる社会情勢を鑑みると(命令は)間違っていない。常識を超えた額の献金を募り、親の信仰に子どもが巻き込まれる事例もある。本来の宗教のあり方とは言えない」と断じた。
■県内信者、疎外を懸念
東京地裁が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に解散を命じたことについて、鹿児島家庭教会(鹿児島市)の川原史行教会長(40)は25日、「非常に重い判断だ」と受け止めた。高額献金や霊感商法は「過去、やり過ぎた部分があったのかもしれない。真摯(しんし)に受け止め反省する」と述べた。教団本部の今後の方針を見守るという。
川原教会長によると、県内には約700人の信者がいる。鹿児島の教会は、昨年10月に同市であったおはら祭(同祭振興会主催)への参加を拒否された。理由は非公表。川原教会長は「解散命令が出たことで、信仰を離れた市民生活でも社会からの疎外が進むのではないか」と懸念。「宗教法人格を失っても信仰は守られるとされるが、体制がなくなれば皆で信仰を続けるのは容易ではない」と話した。
市内の女性信者(68)は「解散命令は残念。国家から否定された気分だ」と話した。