夕食は何がいいか聞かれて「何でもいい」と答える人は要注意…「終活」の専門家が指南する、家族に迷惑をかけないために必要な心構えとは

2025/04/05 15:02
終活と人間関係について話す小谷みどりさん=鹿児島市の西本願寺鹿児島別院
終活と人間関係について話す小谷みどりさん=鹿児島市の西本願寺鹿児島別院
 「終活」に関する研究で多くの著作があるシニア生活文化研究所(東京)の小谷みどり代表理事(56)が3月下旬、鹿児島市の西本願寺鹿児島別院で講演した。老いや病気で自立できなくなる前に、いざという時を支えてくれる人間関係づくりが必要と訴えた。要旨を紹介する。

 自分の死に方を選べるとしたら、「ぽっくり」と「病気で少しずつ」のどちらだろうか。日本ではぽっくり派が大勢だが、「今日明日でもいい」と言う人は少ないのではないか。背景には家族に迷惑をかけたくないとの思いがある。死後の家の片付けや手続きを心配している。

 だが家族がいたら安心だろうか。65歳以上の人が3世代で暮らす世帯は1980年に50.1%だったが、2022年には7.1%に激減した。代わりに夫婦2人暮らし、独居がそれぞれ3割に上る。

 男性より女性が長命となり、長い晩年を一人で生きることが当たり前になった。老いる前に配偶者を亡くすこともある。大切なのは、自分で自分の面倒をみる「生活的自立」と、自分がやりたいことを理解する「精神的自立」だ。

 一人暮らしで洗濯をするのが面倒という高齢男性は洗濯物を減らそうと風呂に入らなくなり、外出がおっくうになり、引きこもりに陥った。セルフネグレクトの状態だ。

 配偶者に夕食は何がいいか聞かれ、「何でもいい」と答えている人も要注意だ。何を食べたいかも答えられないのに、一人になった時、自分のやりたいことを見いだせるだろうか。

 いくら家族に迷惑をかけたくなくても、自立できなくなる日は来る。「そのうち」はNGだ。今すぐに、自分は何をしたいのか、その意思をどう全うするかを考えてほしい。

 日本は家族重視の社会が長年続いた。しかし家族が良き理解者とも限らないし、家族がいない人もいる。私は42歳で夫と死別し、同じ境遇の人たちと「没イチの会」を立ち上げた。旅行や食事などを通し、配偶者の分まで人生を楽しもうと活動している。

 月1回、無料で食べ放題のシニア食堂も始めた。一緒に食べて、仲間をつくる。最初はなかなか言い出せないが、悩みや寂しさはみんな同じと気付く。

 自分の思いを託すのは友人でも趣味の仲間でもいい。ちょっとしたことを頼める人を増やしていくことが大事だ。人は誰かの役に立ったり、信頼を得たりすることで幸福感を高められる。いざという時に「助けて」「手伝って」と言える人間関係を築いてほしい。

 【略歴】こたに・みどり氏 1969年大阪生まれ。奈良女子大大学院修了。第一生命経済研究所主任研究員を経て2019年にシニア生活文化研究所を開設。著書に「だれが墓を守るのか」「ひとり終活」など。武蔵野大学客員教授。

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