「自宅まで送迎してもらえるのが便利」と話す利用者の田原涼子さん=鹿児島市桜島赤生原町
鹿児島市桜島地域で自家用車を活用した住民同士の乗り合い事業が始まっている。島内の全5コミュニティ協議会が運営。電話で依頼を受け、交流サイト(SNS)を通じて目的地近くに用事のある登録運転手とマッチングする。昨年7月の開始から9カ月で利用は計166件に上り、「顔見知りで安心」「交通費が安く済む」など好評だ。一方、運転手確保が課題だ。
市交通政策課や桜峰校区コミュ協によると、住民主体での乗り合い事業は市内で初めて。高齢者などの交通弱者支援を目的に始めた。島内のバスは3路線1日75本と、この10年で約2割減、昼間に実動するタクシーは数台という。
非有償型で、運転手と客がガソリン代やフェリー代などの実費を半分ずつ負担する仕組み。事故の場合は、互いの任意保険などで対応する。
桜島赤生原町の田原涼子さん(76)は市街地の病院や美容院に行く際、自宅からシニアカーや桜島フェリーを乗り継ぎ、市街地側でタクシーを拾っていた。「足が痛くて長く歩けない中、乗り降りがないのは体力的にとても楽。運転手も知り合いで安心感がある」と語る。運転手側からも「値上げしたフェリー代を半額出してもらえるのはありがたい」との声が聞かれる。
課題は運転手の確保だ。登録は30~70代の15人で、実動は約半数にとどまる。今後、高齢化で免許返納者が増え、利用者の増加が見込まれる。コミュ協では、安全運転講習を実施するなど事業の周知に力を入れ登録増を目指すという。
運営に携わる同コミュ協の竹ノ下武宏会長(59)は「桜島版ライドシェアを通し、希薄になった住民同士のコミュニティーを再構築するきっかけにしたい」と意気込む。