長続きの秘けつは〝お気楽さ〟…2カ月に1回立つ「南界朝市」は、主婦の雑談から生まれた。農家や漁協が直接持ち寄る鮮度と安さが好評

2025/04/20 17:30
農家から届く新鮮で安い野菜が人気の南界朝市=3月、中種子町坂井
農家から届く新鮮で安い野菜が人気の南界朝市=3月、中種子町坂井
 四方を海に囲まれた離島では、人と人とのつながりがひときわ濃い。「ともに暮らせばみな仲間」。鹿児島県・種子島と屋久島にも、地域のために汗を流す住民たちがいる。1市4町を歩き、そんな愛ある取り組みに触れた。(連載「支え愛ランド種子島・屋久島」②より)

 「あー、切り花はもう売れちゃったか」。春の彼岸の入り前日、中種子町の国道沿いにある坂井公園。営業開始から10分もたたないうちに、来場者の残念がる声が聞かれた。

 主婦サークルで「地域が盛り上がることをやりたいね」という雑談から、2016年5月に誕生した南界朝市だ。2カ月ごとに、午前8時から3時間半ほど開く。開催1週間前から会場周辺に手作りの看板やのぼりを立てて告知する。

 農家が直接持ち込む旬の野菜は安いと評判で、売り切れも続出する。物価高騰の中で、白菜やキャベツが1個200~300円、葉物は100~150円。朝市発案者の一人、鎌田道子さん(74)は「朝市が知られるにつれ、商品数が増えた。校区の声かけも大きい」と感謝する。

 校区役員や地元町議も名を連ねる実行委員会の代表を務め、もう一人の「鎌田さん」こと鎌田由紀子さん(59)とともに、当初から中心的役割を担ってきた。天候の影響で農作物の出来が悪く、思うように商品が集まらないこともあった。「それでもよかが」という2人の“お気楽さ”が、長く続いてきた秘けつのようだ。

 野菜に並ぶ目玉が、種子島漁協中種子支所が冷凍車で運んでくる魚だ。「地元の魚を知ってもらういい機会」と初回から協力し、調理の仕方も教える。車で約10分の原尾集落から通う遠藤雪子さん(70)は「朝市が楽しみ。野菜も魚も取れたてだから、たくさん買ってしまう」と笑う。

 次回の5月で10周年を迎える。2人の「鎌田さん」は、記念イベントを計画している。

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >