〈資料写真〉豚にワクチンを接種する様子=2023年9月、鹿児島県提供
宮崎県都城市で豚熱(CSF)に感染し死んだ野生イノシシが発見されたことを受け、鹿児島県も11日、情報収集や生産者への周知などに追われた。鹿児島県は日本一の飼養頭数を誇る養豚王国。全国では養豚場で感染が広がり全頭殺処分されるケースが相次いでおり、「侵入を何としても食い止めたい」と関係者らに緊張が走った。
鹿児島県は12日、JA県経済連や県畜産協会、地域振興局員らを集め、緊急の防疫対策会議を開く。県家畜防疫対策課の藏薗光輝課長は「まずは情報を集め、飼養衛生管理基準の順守や野生動物対策などを生産者や関係団体に指導していくしかない」と話す。
2023年8月に佐賀県で豚熱が確認されて以降、鹿児島県内の養豚場でもワクチンの予防接種が進む。同課によると、繁殖農場で生まれる子豚を含め接種率は現在まで100%。野生イノシシ対象の検査も実施しており、24年度は3月中旬までに調べた全456頭が陰性だった。
ただ南九州畜産獣医学教育研究センター(鹿児島県曽於市)の末吉益雄特任教授(66)は「野生動物に県境はない。すでに県内にも陽性個体が潜んでいると考えた方がいい」と指摘する。イノシシは4月ごろから出産し、餌を求め家族で行動するため、今後はより注意する必要があるという。
末吉教授は、生産者側の対策として、養豚場を行き来する際の消毒や長靴交換の徹底などをアドバイス。人間の靴底や衣服などにウイルスが付着する可能性もあることから、「県民も山や沢などへ行った際は、しっかり泥を落として帰るなど、まん延防止に協力してほしい」と呼びかける。
鹿児島県内では24年2月1日現在、387戸が計120万頭を飼養する。うち鹿屋市は19万6400頭を飼う県内一の産地だ。畜産課の有馬国昭技術補佐は「市内の全農家へ防疫対策の徹底をお願いしている」と話した。