発案は宇宙開発の転勤族の妻たち。地域と移住者をつなぐ「おはなしの会」は30年を迎えた。親子読書は校区を超えた交流も生む

2025/04/20 21:00
30周年イベントで子どもたちに話をする「おはなし子ども会」=2月、南種子町中央公民館
30周年イベントで子どもたちに話をする「おはなし子ども会」=2月、南種子町中央公民館
 四方を海に囲まれた離島では、人と人とのつながりがひときわ濃い。「ともに暮らせばみな仲間」。鹿児島県・種子島と屋久島にも、地域のために汗を流す住民たちがいる。1市4町を歩き、そんな愛ある取り組みに触れた。(連載「支え愛ランド種子島・屋久島」③より)

 子どもたちに質問をしながら、エプロンに小道具を貼り付けて物語を進めていく。時には歌ったり、踊ったりも。「違う自分を出せる。恥ずかしさを感じることもない」。南種子町おはなし子ども会のメンバーたちは笑顔を見せる。

 町中央公民館で月1回開く「おはなしの時間」は親子に人気で、校区を超えた交流も生まれているという。同町は種子島宇宙センターがあり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の関係者や町の留学制度を使って移住する世帯も多く、地域コミュニティーへの「入り口」的な役割を担う。

 設立は1994年。JAXAの前身、宇宙開発事業団(NASDA)の転勤組の妻たちが立ち上げた。拠点のある茨城で盛んだった親子読書活動を、種子島に持ち込んだ。現会長の鈴木啓子さん(42)も夫がJAXA勤務。知人に誘われ、「外から見ていても楽しそう」とメンバーに加わった。

 2024年度は30~70代の16人が所属した。異動期の3、4月は年間計画の立案やスキルアップの時間で、読み聞かせの専門家、ボイストレーナーらに指導を受けることもある。子育てが一段落した地元住民や、留学生の保護者の参加も少なくない。

 「いろいろな人が地元に関わってくれるのがありがたい」。約15年活動する元教員の河野節子さん(75)は喜ぶ。最近は種子島にまつわる話や方言をよく取り上げる。

 活動の原点は、子どもの成長を願う思いだ。東京出身の北村則子さん(48)は「メンバーが入れ替わっても、バトンをつないでいきたい」と力を込めた。

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