再審制度はなぜ変わらない? 映画「それでもボクはやってない」-監督・周防正行さんが明かす法制審の限界と市民運動の突破口

2025/04/21 15:03
「議員立法で再審法を改正すべきだ」と語る周防正行さん=14日、東京都内
「議員立法で再審法を改正すべきだ」と語る周防正行さん=14日、東京都内
 有罪が確定した裁判をやり直す再審制度を巡り、法整備に向けた動きが加速している。超党派の国会議員連盟が議員立法で法改正を目指す一方、鈴木馨祐法相は法制審議会に手続きの在り方を諮問した。改革をどう進めるべきか。法制審特別部会で委員を務めた経験がある映画監督の周防正行さん(68)に話を聞いた。

 -2011~14年に開かれた法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」で委員を務めた。

 「大阪地検特捜部の証拠改ざん事件がきっかけで設置され、総勢42人のメンバーのうち一般有識者7人の一人として参加した。取り調べの録音録画が大きなテーマとなり、裁判員裁判対象事件と検察独自捜査事件で導入することになった」

 「再審請求審における証拠開示について、ある裁判官委員が統一的な運用方法の検討を求めたが、後任の裁判官委員は事案の内容や性質、請求の理由、証拠構造は千差万別で、ルールを設けるのは難しいと意見した。裁判所の運用に任せてほしいということで議論に終止符が打たれた」

 -感じたことは。

 「不十分な改革にしかならなかった。刑事司法関係者は組織の利益代表であり、捜査機関も『冤罪(えんざい)などない』という立場を崩そうとしない。法務官僚を構成しているのは検察官。『自分たちのやり方は正しい』と考える人たちが開く土俵で議論しても、限界があると思い知らされた」

 -「再審法改正をめざす市民の会」の共同代表だ。

 「法務省が開く法制審を頼っても何も変わらないと実感し、改革を迫るなら立法機関に直接働きかけるしかないと思った。結成から6年。ようやく議員立法で法改正が実現するかもしれないところまで来た。市民運動の成功体験にしたい」

 -改正に慎重姿勢だった法相が法制審に諮問した。

 「議員立法での法改正は法務検察にとって危機だ。自らのコントロールが及ぶ『お抱え組織』に諮問して議論を取り上げ、捜査機関にとって都合のよい法改正をしようとしている」

 「再審開始決定に対する不服申し立ての禁止など、検察官の権利を奪うような改革に法務検察が賛成するはずがない。法制審での議論は、これまで問題ある対応をしてきた検察官がまた新しいルールをつくるのとイコールだ。公正さを担保するためにも、議員立法で法改正するしかない」

 -刑事訴訟法を議員立法で改正した例はないとみられる。

 「議連は弁護士だけでなく、裁判所や法務省にも意見を聞いた上で改正法案の要綱をまとめている。証拠開示の制度化や再審開始決定に対する不服申し立ての禁止など、四つの柱は特に緊急性が高い。法制審の議論を待つ必要はない」

 -10年前から大崎事件の再審請求を支援している。

 「知的障害が疑われる“共犯者”らの自白を信用できるとし、有罪が維持されているのは信じられない。再審開始決定が3回も出ていることを考えれば『疑わしきは被告人の利益に』が適用されてしかるべきだ」

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