〈資料写真〉輸出用養殖ブリの9割を米国向けが占める東町漁協。影響を懸念している=2024年12月、長島町の薄井漁港
トランプ米政権の関税強化に絡み、米側業者から輸入キャンセルが出ているとの調査結果を受け、鹿児島県内の農林水産業関係者からは24日、「振り回される側は苦しい」「米国は主要輸出先なのに」と不安の声が上がった。
JA食肉かごしま(鹿児島市)は2024年度、JA全農を通じ約500トンを輸出。うち3割が米国向けだった。関税強化後から影響は徐々に出始め、冷蔵商品の動きは滞ってきた。
竹下勝久販売事業部長(55)は「米側業者も様子見状態だが今後は分からない。米国向けを急きょ他国や国内向けに振り替えることは難しい」と気をもむ。
「キャンセルの報告は聞かないが、来年以降は影響するかも」と話すのは、養殖ブリ生産日本一の東町漁協(長島町)の山下伸吾組合長(65)。24年度に輸出した38万匹弱(20億円)の7割を米国が占める。米側業者との年間計画にのっとり生産するものの、今後キャンセルがあれば在庫を抱える可能性もあるという。
海外の抹茶ブームを受け、鹿児島では原料のてん茶生産拡大へ官民一体で取り組む。お茶の沢田園(鹿児島市)の澤田了三会長(74)は「米国は主要な輸出先なだけに心配。トランプ大統領の言動を注視していきたい」と警戒する。
農林水産物の輸出に力を入れる県は、事業者への聞き取りを続ける。かごしまの食輸出・ブランド戦略室の上永田剛志室長は「状況把握に努める」と述べた。