シラスウナギ豊漁となった2024年漁期。ただ国内産だけでは賄えないのが現状という=24年12月1日、大崎町の菱田川河口
食用のニホンウナギを含むウナギ類全種を対象に、ワシントン条約の規制対象とする提案を欧州連合(EU)が検討していることについて、ウナギの養殖生産量日本一を誇る鹿児島県の関係者からは「経営が成り立たなくなる」「国は提案を防いでほしい」などの声が聞かれた。
EUは、ウナギ類全種を輸出国に許可書の発行を義務付けしたい考えとみられる。仮に提案が認められた場合、輸入シラスウナギ(ウナギの稚魚)の入手が難しくなり、取引価格の高騰が予想される。
県水産振興課によると、県の2024年度漁期のシラスウナギ採捕量は約2.5トン。35年ぶりの2トン超えと「豊漁」だった。一方で、養殖用に投入するシラスウナギの池入れ量上限は鹿児島県は8.5トン。不足分は県外産や輸入で補っているのが現状という。
県内のある養鰻(ようまん)業者は「提案が認められれば、海外分が扱えなくなるかも。致命的だ」と危機感を募らせる。24年度漁期は全国的にも豊漁だったが、近年は不漁続きで国産だけでは賄えず輸入に頼ってきた。「国内分だけでは商売が成り立たない。国は何としても提案を防いで」と訴えた。
県しらすうなぎ採捕取扱者協議会の皆倉貢副会長(78)は「シラスウナギの取引価格が上がりすぎると、購入する養鰻業者が困るのはもちろん、結果、かば焼きなども高くなるだろう。ウナギの消費離れにつながらないか」と心配する。
ウナギの生態や資源保護を研究する鹿児島大学水産学部の安樂和彦教授(56)は、日本のウナギ文化への影響を気にする。「日本はこれまで他国に先んじて資源回復に努めてきた。政府は実績を主張すべきだ」と指摘した。