名湯を継ぎわずか1カ月、湯舟は濁流にのまれた「石1つ1つ運んで意味あるのか?」――支援に救われ「細胞が喜ぶ」湯は復活した

2025/04/27 18:03
湯川内温泉かじか荘の再開にこぎつけた山口貴史さん
湯川内温泉かじか荘の再開にこぎつけた山口貴史さん
■「かお」 出水市の湯川内温泉かじか荘の再建に奔走した山口貴史(やまぐち・たかし)さん

 鹿児島県出水市武本の湯川内温泉かじか荘を、約1年7カ月ぶりの再開にこぎ着けた。昨年7月に施設を購入後、翌8月末の台風10号で無数の石や川の水が流れ込み甚大な被害を受けたが、多くの寄付やボランティアによる作業で乗り越えた。大阪出身の53歳は「支援してくれた人たちの思いで続けられた。ほんま、ありがたい」と目を潤ませる。

 一般社団法人純温泉協会代表理事で「趣味は温泉」という。かじか荘は温泉が浴槽の底から湧き出る足元湧出が特徴で「湯の鮮度は全国トップ級」と自負する。前所有者が閉めたのを知り「守らなければならない日本の宝」と購入に踏み切った。

 被害当初は「何ができるか分からなかった。石を一つずつ運んでも意味があるのかなと思った」。協会などを通し支援を求めると、全国から600万円以上が集まり、約50人が復旧に当たった。体力的、精神的にもきつく、体重は5キロ落ちたが「日に日に感謝という気持ちが大きくなった。多くの人の力を借り生かされている」

 九州芸術工科大学を卒業し、若いころは建築設計などに従事。福岡県大川市の家具のネット販売をしていた際、大阪からの出張時に九州の温泉を巡るようになった。かじか荘は12年前、初めて入った。「自然なままの、鮮度の高い温泉が素晴らしい。入った瞬間に全身の細胞が喜ぶ。それがかじか荘」

 妻の桂子さん(55)と大阪府吹田市に暮らす。広島風お好み焼きが好きで「自分でもよく作る」と笑う。

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