“脱百貨店”が的中 三越閉店後に開業15年。ロフト、スタバ、無印良品…新生マルヤは天文館の交流拠点に定着した

2025/04/29 17:01
開業15年を迎えた「マルヤガーデンズ」=鹿児島市中町
開業15年を迎えた「マルヤガーデンズ」=鹿児島市中町
 鹿児島市呉服町のマルヤガーデンズは28日、開業から15周年を迎えた。三越鹿児島店閉店後、「ユナイトメント=すべてをつなぐ」をコンセプトに掲げ、百貨店から複合商業施設へと業態を変更。店舗スペースを割いて設けたイベント広場や有名チェーン店の積極的な誘致で、天文館の交流拠点として定着している。

 2009年5月、三越鹿児島店は消費不振や競争激化による業績低迷を受け閉店した。天文館のほぼ中心地に位置する立地。WeLove天文館協議会の牧野繁会長(69)は「人通りも少なくなり、天文館にとってもマイナスだった」と当時を振り返る。

 市街地空洞化阻止の期待もあり、マルヤは1年足らずで開業にこぎ着けた。運営する丸屋本社の柳田洋社長(70)は「昔ながらの百貨店の在り方では立ち行かない。人と物がつながる場所として、地域の人も一緒に表現してくれる場にしたかった」と明かす。

 象徴の一つが、にぎわい創出を目的とした集いの場「ガーデン」。当初、全8フロアに設けた多目的空間を地域に開放した。フロアが埋まらない苦肉の策でもあったが、講演会やライブ、展示会など多種多様な催しは集客や既存店への刺激につながり、全国から視察がくるほど注目を集めた。現在も3フロアで月に大小20~30のイベントを開く。

 当初想定した30~50代の客層は、社員発案で16年に誘致した大手総合雑貨店「ロフト」で拡大した。「従来の百貨店的なフロアの使い方と異なる」(柳田社長)という1フロア全体貸しに、南九州初出店という目新しさも加わり若者世代を取り込んだ。19年にスターバックスコーヒー、20年には生活雑貨ブランドの無印良品が入り、交流拠点としての立場を確立した。

 マルヤの特徴の一つには、総売上高で占める雑貨の割合がある。日本百貨店協会がまとめた3月の百貨店売上高で雑貨は22.5%。これに対してマルヤは約5割を占める。新型コロナウイルス禍では、その雑貨の豊富さが強みとなり、全国の百貨店が約24%売上高を落とした20年度(同協会まとめ)もマルヤは約15%にとどまった。

 24年度の来館者数は333万人。売上高はコロナ禍の20年度に前年を下回った以外は増加を続ける。目標とする三越閉店時の約90億円にはまだ届かないものの、24年度は過去最高の約60億円を記録した。九州経済研究所(同市)の福留一郎経済調査部長(58)は「商品購入だけでなく体験型の消費にも目を向け、以前と違った手法で成功している」と評価する。

 百貨店を含む商業施設では、ネット通販の拡大や人口減、高齢化に伴う客層の変化と過渡期が続く。福留部長は「訪日客の取り込みや地域との共存共栄をより強めることも重要」と指摘、柳田社長は「マルヤらしさを忘れず、新鮮な空間づくりをしていきたい」と意気込む。

■マルヤガーデンズ 2009年5月の三越鹿児島店閉店後、三越以前に同所で百貨店を運営し、土地・建物の一部を所有していた丸屋本社が改修、10年4月に開業した。事業費43億円。市の融資や、国と市の補助金5億円余りも受けた。現在ファッション、書籍、雑貨、スーパーなど65店が入店。コミュニティーシネマ、結婚式場、児童発達支援事業所もある。

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