マイク切り問題から1年――環境相が水俣病被害者団体ときょうから懇談会 あす1日は公式確認69年、獅子島の会と懇談

2025/04/30 06:27
〈資料写真〉2024年5月1日、懇談会でマイクを切った国の対応に抗議する被害者団体関係者ら(左)=熊本県水俣市の水俣病情報センター
〈資料写真〉2024年5月1日、懇談会でマイクを切った国の対応に抗議する被害者団体関係者ら(左)=熊本県水俣市の水俣病情報センター
 「公害の原点」といわれる水俣病は5月1日、公式確認から69年となる。熊本県水俣市では同日、犠牲者慰霊式があり、浅尾慶一郎環境相らが出席する。環境省は昨年、式後の懇談会で被害者団体の発言中にマイクを切り批判を受けた問題を受け、4月30日から2日間の日程で環境相と被害者らとの懇談の場を設けた。だが水俣病特別措置法に基づく住民健康調査の手法を巡って意見が対立し、解決への道は見通せない。

 水俣病の認定患者は、鹿児島、熊本両県で2284人に上り、うち鹿児島が493人。認定審査を待つ申請者は両県で1271人、うち鹿児島県1014人。2009年施行の特措法に基づく救済の対象外となった約1700人が司法に解決を求め、全国で訴訟を続けている。

 水俣市では29日、支援者らが集会を開いた。環境省が来年度にも始めるとしている健康調査の手法について、水俣病の診療と研究を行ってきた高岡滋医師(64)が講演。被害者7団体が補償の見直しや訴訟の見通し、被害の実態把握のあり方について意見を述べた。

 高岡医師は、環境省が採用する脳磁計とMRIを組み合わせた健康調査について解説し、「まずは疫学的に被害の広がりを把握すべきなのに、国は半世紀も調査を怠ってきた。環境省の手法では広がりを把握できない。何のための調査なのか」と姿勢を批判した。

 昨年、最初にマイクの音声を切られた、水俣病被害市民の会の山下善寛代表(84)は「環境省通知の問題点を指摘している最中にマイクを切られた。この回答はまだもらっていない」と語気を強めた。

 原因企業チッソによると、認定患者の9割はすでに亡くなった。3月末時点の生存者は両県合わせて211人(前年同期比18人減)で、平均年齢は80.9歳。うち鹿児島県在住者は54人で平均年齢80歳。

 1日は浅尾環境相と水俣病被害者獅子島の会との懇談や、犠牲者慰霊式のほか、水俣病のすべての犠牲者をまつる同市の「乙女塚」で水俣病互助会による慰霊祭がある。

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