毎年4月から6月にかけては学校健診のシーズン。子どもたちの健康維持や病気の早期発見が目的だが、鹿児島県内では健診を担う「学校医」の不足が課題になっている。特に地方で医師一人当たりの負担が増しており、現場からは「地域に合った診療体制が構築できるようにしてほしい」との声が聞かれる。
学校健診は、学校保健安全法で小中高校での実施を義務づけている。検査は身長・体重、視力・聴力など11項目あり、心音や呼吸音の異常、背骨のゆがみなどを調べる。効率的な集団健診で、子どもの隠れた病気を早く発見する狙いがある。
■1人で10校担当も
学校医を担うのは主に地域の開業医で、各郡市医師会が中心になっている。地域によっては診療科がなく、鹿児島大学病院の医師が対応するところもある。
しかし近年、なり手不足が顕在化している。県医師会常任理事の立元千帆医師(50)=学校保健担当=によると、特に大隅地域や離島で不足。とりわけ眼科と耳鼻科の負担は大きく、1人で10校担当する眼科医もいるという。
■高齢化も追い打ち
医師の高齢化も追い打ちをかける。通常の診療に加えて、健診は学校に出向いて短時間で多くの子どもを診るため負担が大きい。立元医師は「年齢を理由に、この5年で辞める人は多いだろう」と懸念する。医師の負担に対し、自治体ごとに定める報酬が低いことも要因とみる。
一方、負担を減らそうと工夫する地域もある。志布志市は、特認校など小規模校の児童生徒をバスで1カ所に集めて、集団健診する環境を整えている。対象は小学1年の心臓や耳鼻科、眼科。学校医で、同市の浜崎喜與志医師(59)=はまさき耳鼻咽喉科院長=は「各学校が離れており、1校ずつだと7月くらいまでかかる。効率化が図れてありがたい」と話す。
■健診方法の見直しも
健診は法に基づいて、全学年、所定の項目で実施している。立元医師は「実情に合わせて、地域で診療形態を決められるようにしてほしい」と求める。負担軽減策として、検査項目の削減や、対象を全員とせず、一部の学年としたり、問診票の内容から受診者を絞ったりする「重点健診」を挙げた。
さらに、健診時は子どもの脱衣も問題になることがあり、立元医師は「学校医の要請を断る要因になりかねない」と指摘する。「学校健診は限られた人数、時間で精度も求められる。国が健診方法など全体のルールを定めてくれたら」と話した。