オンラインカジノ開始1カ月で6割が借金…「朝から晩までレース」 ギャンブル依存症当事者や家族が語る実態

2025/05/21 14:45
脳の疾患であるギャンブル依存症について学ぶ参加者ら=鹿児島市の宝山ホール
脳の疾患であるギャンブル依存症について学ぶ参加者ら=鹿児島市の宝山ホール
 ギャンブル等依存症問題啓発週間(14~20日)に合わせ、全国ギャンブル依存症家族の会鹿児島は10日、鹿児島市で特別セミナーを開いた。当事者や家族が思いを語ったほか、ギャンブルに関する民間の全国調査の結果などが報告され、参加者は依存症を取り巻く現状に理解を深めた。

 ギャンブル依存症は賭け事にのめり込み、衝動を抑えられなくなる精神疾患。競馬や競輪などの公営競技は法律で認められているものの、朝から深夜まで各地で競技がある。最近はオンラインカジノも広がりをみせる。日本国内からサイトにアクセスして金を賭けると「賭博罪」にあたり、利用者の摘発が相次いでいる。

 セミナーでは、県依存症治療拠点機関、森口病院(同市)の田中大三院長が講演。「ギャンブル依存症は家族や周囲との人間関係も要因の一つ。脳の疾患だということを認識してほしい」と話した。

 治療を続けながら当事者支援にあたる同市の男性(36)は、自身の経験を紹介。賭け事で約500万円の借金を抱えたが、入院治療を経て、2年ほどギャンブルと離れた生活を送る。「回復する姿を見せることが、迷惑を掛けた親への孝行になる。完治することはないが、自分の経験を誰かの回復につなげたい」と語った。

 ギャンブル依存症問題を考える会(東京)が3月と5月、依存症者やその家族に実施した調査結果も報告された。

 その一つ、オンラインカジノ経験者(93人)に対するアンケート調査では、利用者の52%が「違法」と認識していなかった。カジノの利用開始から最初に借金するまでの期間は「1週間以内」「1カ月以内」が計63%。口座売買や携帯電話の転売など別の犯罪に46%が及んだとした。

 公営ギャンブルから依存症になった人がのめり込んだ要因には、「朝から深夜までレースがある」「会員登録が非常に簡単だった」「クレジットカードで入金できた」が多く挙がった。

 同会が家族を通じ、1~3月に把握した全国の依存症者は112人。10~30代は7割を占め、若年層への浸透がうかがえる。公営競技とオンラインカジノのどちらにも興じた人は8割を超えた。

 全国ギャンブル依存症家族の会鹿児島の本田恵美子代表は、「若年層のギャンブル依存症は、将来の人生設計に影響を与える」と指摘する。「公営競技の監督官庁は利用促進に躍起で、依存症への効果的な対策が打てていない。国は各競技を監視する独立した組織を設け、規制を強化するべきだ」と訴えた。

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