中国人3人の大量密猟容疑、地元に衝撃 1匹2万円の天然記念物オカヤドカリを5200匹 1週間かけ乱獲か 取り締まりに限界 奄美大島

2025/05/23 07:00
奄美署が押収したオカヤドカリ。奥のスーツケースに入れられていた=7日、奄美市の同署
奄美署が押収したオカヤドカリ。奥のスーツケースに入れられていた=7日、奄美市の同署
 世界自然遺産の奄美大島で5月上旬、国の天然記念物オカヤドカリ約160キロを許可なく持ち出そうとしたとして、中国籍の男3人が文化財保護法違反の疑いで逮捕された。奄美署は22日、捕獲されたのは約5200匹に上り、3人は約1週間かけて島内の海岸を巡り素手で集めたとみられると明らかにした。密猟は生態系に影響を与える恐れがあるが、取り締まりは限界がある。生物の多様性を守るには、地域全体の理解や協力が必要となりそうだ。

 「ついに逮捕者が出たかという印象。今回は運よく気付けたが、氷山の一角に過ぎない可能性がある」。奄美市立奄美博物館の平城達哉学芸員は指摘する。「オカヤドカリは天然記念物の中では生息数は多いが、5000匹以上集めるのは相当な労力が必要。生態の知識があったのかも」と話す。

 環境省などによると、奄美大島での動植物の違法採取を巡っては、2019年に東京のペットショップ店長らが種の保存法違反罪などで実刑を受けた。世界自然遺産に登録された21年以降はなかったとみられる。

 奄美市や環境省はパトロールをしているが、範囲は限られる。手荷物検査がない船舶での持ち出しや動き回る生物の密猟は、取り締まるのは難しい。

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 文化庁によると、オカヤドカリの捕獲や国内流通は、沖縄県の専門業者のみに特例で認められている。業者によると、中国や台湾ではペットとして人気で、1匹2万円で売買されるケースもある。沖縄では、オカヤドカリの密猟による逮捕者が相次いでいる。

 「カリカリカリ」。今回の逮捕は、3人が宿泊していたホテルビッグマリン奄美のスタッフがスーツケースからの音に気付いたのがきっかけだ。オカヤドカリは六つのスーツケースに入っていた。

 同ホテルの田畑敬一郎取締役によると、環境省の職員から動植物の捕獲・採取規制について事前に学んでいたのが役立った。これまでも利用者の中には怪しい行動をする人がいたといい、「大切な島の資源をみんなで守ろうという意識は、観光関係者に広がっている。ただ全てに対応するのは難しく、海路での荷物検査が必要では」と指摘する。

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 男3人の動機は不明だが、奄美署は販売目的も視野に入れて捜査を進める。押収されたオカヤドカリは証拠品として、奄美市の施設で保護されている。署や市などは自然に戻すことを検討している。

 「希少種だけでなく、どんな動植物でも乱獲されると生態系に影響が出る恐れがある」。環境省奄美群島国立公園管理事務所の広野行男所長はそう語り、不用意な動植物の捕獲、採取に注意を呼びかける。

 同事務所は今回の事件を教訓に、捕獲や採取が禁止されている種類の紹介だけでなく、生物の多様性を守る重要性の発信を強化する方針。広野所長は「地域全体で共通認識を持つことで違法行為を防ぎ、いつ来てもさまざまな生物が見られる島にしたい」と話した。

■奄美大島での動植物の捕獲・採取禁止

 さまざまな法律や条令で規制されている。種の保存法では2024年7月時点でアマミトゲネズミやアカヒゲなど28種類。国指定天然記念物はオカヤドカリやルリカケスなど9種類ある。全ての動植物の捕獲や採取が禁止されている国立公園特別保護地区もある。

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