競馬功績者表彰を受けた柏木務さん
■かお 九州の競馬発展に尽力する競走馬育成者 柏木務(かしわぎ・つとむ)さん
競走馬育成協会の九州支部長として、九州産限定レースの維持や生産頭数の回復に尽力してきた。「九州産馬の灯が消えなくて良かった」と振り返る。
九州は競走馬の伝統的な産地。しかし、レジャーの多様化などで地方競馬を取り巻く環境は厳しく、中津(大分県)が2001年、荒尾(熊本県)は11年に閉場に追い込まれた。最盛期に約200頭だった年間生産頭数は、一時40頭以下にまで減少した。
「限定レースを残すことが競馬産業の維持につながる」との信念から、残る小倉と佐賀の両競馬場に仲間と陳情を重ねた。願いが届きレースは大きく減らされず、生産頭数は現在100頭ほどにまで回復した。
競馬産業振興への貢献から、4月に競馬功績者表彰(農林水産大臣賞)を受けた。「頑張ってきたことが認められて光栄」と感無量の様子で話す。
大崎町出身。母親の実家が牧場を経営しており、子どもの頃から馬が好きだった。農耕馬とは触れ合っていたが、「すらりとした脚がかっこいい」と競走馬に興味を持つように。小学4年の時に父親が1頭の繁殖馬を買ってくれ、本格的に競走馬の飼育を始めた。
高校卒業後は叔父の牧場で修業し、その後独立。馬主として約200頭を送り出した。1999年のGⅠ桜花賞やオークスに出走した「カシノリファール」も育てた。80歳の今でも娘や孫と調教や生産に携わる。鹿児島県鹿屋市の牧場近くで妻と暮らす。