線状降水帯と震度6弱が同時に発生、負傷者多数――「実践シナリオ」で見えた孤立リスク、地方の乏しい医療資源 鹿児島県総合防災訓練

2025/05/26 11:30
重症者を手当てするDMAT関係者=25日、さつま町の宮之城運動公園体育館
重症者を手当てするDMAT関係者=25日、さつま町の宮之城運動公園体育館
 豪雨と大規模地震の同時発生に備えた鹿児島県総合防災訓練が25日、さつま町一円であり、消防や自衛隊など94機関、住民約千人が参加した。孤立集落の発生を想定し、自衛隊による住民の救助やドローンでの情報収集と物資輸送、災害派遣医療チーム(DMAT)による地域拠点病院の支援などを訓練した。

 さつま町に線状降水帯が発生し、川内川流域に「緊急安全確保」を発令。鶴田ダムの緊急放流開始後、県北西部を震源とするマグニチュード7(最大震度6弱)の地震が発生した想定。

 災害対策本部は陸上自衛隊に災害派遣を要請。ドローンで孤立集落の状況を確認し、陸自隊員が救助に向かった。地震発生後にはDMATを要請し、薩摩郡医師会病院を模した体育館で、病院職員とDMAT(県内14病院80人)が協力して患者役の町民70人に治療の優先順位を決めるトリアージと応急手当を行った。

 同病院の神野公宏院長(58)は「実践的なシナリオ。DMATの仕組みがなければ途方に暮れてしまうだろう」。統括DMATの川上雅之医師(55)=鹿児島赤十字病院=は「鹿児島市以外は医療資源が少ない。地方の病院と協調し、鹿児島市に搬送するための課題も見つかった」と話した。

 衛星通信手段の確保や、ドローンでの物資輸送、倒木や横転した車両を排除する訓練もあった。

 家族4人で避難訓練に参加した同町宮之城屋地の栄養士四枝枝理さん(37)は「避難所に仕切りがあり、思ったより安心できた。段ボールベッドもしっかりして広く感じた」と話した。

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