現在の旧鹿児島貯木場=2023年12月、鹿児島市浜町
鹿児島市浜町に現存する「旧鹿児島貯木場 屋久杉等海上輸送施設遺構」が28日、日本森林学会が認める林業遺産に登録された。県内では2016年度登録の「屋久島林業集落跡」に続き2件目。整備された明治期には国内最大級の貯木場で、専門家は「市街地にこのような遺構が現存するのは全国的に珍しい」と評価している。
認定対象は、鹿児島湾に面した貯木場約7.1ヘクタールのうち、林野庁鹿児島森林管理署管理の国有地1.36ヘクタール。空襲で沈没した木材運搬船の慰霊碑、木材運搬船が出発していた「安房船溜」(屋久島町)なども含まれる。学識経験者でつくる選定委員会が審査し、3月に登録が決まった。
旧鹿児島貯木場は1910(明治43)年に整備され、屋久島や大隅半島の木材を集積し、国鉄鹿児島駅(現JR鹿児島駅)から輸送していた。陸路の拡充や屋久杉の伐採量減少により昭和30、40年代以降は規模が縮小し、2006年に廃止となったが、荷揚げ場は当時に近い姿を残している。
林業遺産九州地区推薦員で、鹿児島大学農学部の奥山洋一郎助教(51)は「当時は官船4隻で大規模に木材を運んでいた。歴史的な遺構を知るきっかけになれば」。推薦人の一人で同管理署の香月英伸署長(58)は「歴史のロマンが詰まっている。観光や教育に生かしたい」と意気込んだ。