〈資料写真〉ウエルシュ菌の電子顕微鏡像(国立健康危機管理研究機構サイトより)
鹿児島県内は5月中旬に梅雨入りし、これから気温や湿度が上昇する。この時季は細菌が繁殖しやすく、食中毒に注意が必要だ。県は15日から10月14日までの間、気温や食中毒の発生状況に応じて「食中毒注意報」を発令し、「基本的な予防を心がけてほしい」と呼びかける。
2024年に県と鹿児島市に報告された県内の食中毒は計10件。ノロウイルスなど冬に発生しやすいウイルス系を原因とする事案が目立った。25年(3月末時点)は計9件で、うち7件がノロウイルスだった。
気温の上がる夏場は細菌性の食中毒が増える傾向にある。県内では昨年8月と10月、黄色ブドウ球菌とウエルシュ菌による食中毒が確認された。飲食店だけでなく、家庭の食事にも食中毒の危険は潜んでいる。県生活衛生課は「報告されない家庭内の食中毒はもっとあるのでは」とみる。
厚生労働省は食中毒予防の3原則を掲げている。
まずは細菌を「付けない」。十分な手洗いと食材の洗浄、まな板や包丁など調理器具の消毒が大切だ。
次は「増やさない」。冷凍や冷蔵保存をし、調理後はできるだけ早く食べる。
そして「やっつける」。十分に加熱して調理する。中心温度が75度で1分以上の加熱が目安だ。
菌が増殖するのは気温や湿度が高く、水分や栄養がたくさんある環境だ。食品の購入時に肉や魚を分けて包み、冷蔵庫は10度以下、冷凍庫はマイナス15度以下に維持するなど日頃から実践できるポイントは多い。
作り置きを食べる場合は、再加熱や毎回の取り箸の交換が重要。水分が多いと菌が増えやすいため、弁当に詰める時は汁気をよく切ることを意識したい。
梅雨が明けると夏が本格化する。県は夏休みやお盆周辺で毎年1~2回ほど食中毒注意報を発令し、市町村や保健所に啓発を促している。同課は「夏場は食材も傷みやすい。保管場所や方法など取り扱いに気を付けて」としている。