約9億円の設計関連予算議案を賛成多数で可決する鹿児島県議会文教観光委員会=20日午前10時37分、県議会
鹿児島県が計画する新総合体育館整備の議論を20日に終えた県議会文教観光委員会。「県民の関心が高い問題」と審査を持ち越しながら、同日質問した委員はたった1人で、約9億円の設計関連予算議案を賛成多数で可決した。大型事業を大きく前進させる動きに、早期建設を求める競技団体は安堵(あんど)し、見直しを求める県民は怒りをあらわにした。
委員会は午前10時に開会。無所属の橋口住眞委員が「長期的なスパンで見た財源や人口減少などの詳細データがそろっていない」などと当局に迫ったが、他の委員の発言はなく質疑は30分ほどで終了。審査1日目の18日と合わせた総質疑時間は約2時間40分だった。橋口氏の質疑が終了した直後、複数の委員から「よし」という声が漏れた。
採決を終え、自民党の鶴薗真佐彦委員は「丁寧に議論することができた」とした。橋口氏は閉会後、「これまでの説明で足りない部分を尋ねたが、既定路線に感じた。立ち止まり県民の声を聞く機会は必要だ」と訴えた。事業の白紙撤回や推進などを求める陳情は85件にも上った。項目ごとに進められた採決では、採択、不採択、継続審査の判断を挙手で示す際、委員が混乱する場面も目立った。
早期整備の陳情を提出し傍聴に訪れた県体操協会の早馬省二理事長(65)は「今日の議論は十分だった」。県内で五輪選手の報告会を開催しようとした際、会場が確保できなかった経験がある。「希望した通りになりよかった。早く整備に着手してほしい」と話した。
事業の問題点を解説するウェブサイト「鹿児島サバイブ」発起人の一人で、事業の白紙撤回などを求める陳情を出した鹿児島市の自営業中村稔彦さん(51)は、設計費容認をネットニュースで知り「やっぱりなという感じで結果はわかっていた。鹿児島は二元代表制が崩壊している」と憤る。
県民投票実施や、設計費容認前に県民意見を聞く機会を要望する項目も不採択だった。「県民の無関心が最もよくない。関心を高めるため今後も活動を続ける」と語った。