学生に食事介助の指導をする看護師(中央)=5日、さつま町の薩摩郡医師会病院(画像は一部加工しています)
鹿児島県内では、看護師の離職率が年々増加している。日本看護協会の調査によると、2023年度の県内看護師の既卒者離職率は大分県に次いで全国で2番目に高い。現場の看護師からは「給料が見合わない」「体力的に負担が大きい」との声が聞かれる。高齢化ともに看護需要は増えると予想され、県内医療機関は試行錯誤を重ねている。
「せめてもっと給料が良ければ続けていた」。鹿児島市の20代女性看護師はつぶやいた。5年間勤めた同市の総合病院を辞め、現在は個人病院で働いている。
前職時代は毎日2~3時間の残業や、始業前に入院患者の体調管理をするなどの“前残業”が常態化していた。「学ぶには適していたが、忙しさと責任の重さに耐えきれず辞めてしまう人が多い。給料の高い県外に転職する人もいた」と振り返る。
23年度の県内看護師の離職率は既卒22%(前年度比2ポイント増)、正規雇用13%(同0.6ポイント増)、新卒9.1%(同1.1ポイント増)。いずれも全国平均を上回る。
県内医療の中核を担う鹿児島大学病院(同市)には、毎年90人前後の看護師が入職する。新卒者向けに1年間の教育プログラムを実施するほか、教育担当を4人配置してサポート体制を強化。既卒者も同様に、約半年間のプログラムを設けている。
同病院の24年度の看護師離職率は、正規雇用11.2%、新卒5.9%、既卒15.8%。主には体力的に厳しいことやメンタル面が離職の理由だが、前向きな理由もあるという。福田ゆかり看護部長(54)は「訪問看護などやりたいことを見つけて県内の施設で働く人もいる。大学病院で経験を重ね、地域に貢献する姿は応援したい」と語る。
一方、地方では看護師の確保に頭を悩ませる。薩摩郡医師会病院(さつま町)は毎年、新卒者を1~2人採用する。常勤看護師は42人で、非常勤の看護助手や学生が業務をサポートする。「今いる人数をどう維持し、やりくりしていくかが課題」と久保田祥子看護部長(65)はため息をつく。
鹿児島県内は他県に比べて給与が低く、地域でも差があるという。同院も夜勤手当や定年の引き上げなど離職を防ぐための対策をとるが、常勤看護師は減少傾向にある。数年働いた後、高度医療をしたいと転職する新卒者も少なくない。
久保田看護部長は「このままでは独居や高齢者世帯の多い地方の病院は成り立たなくなる」と不安をのぞかせる。就職者が少ないからこそ一人一人に合った指導で育成できるとし、「給与のベースアップや年齢を重ねても働きやすい環境の整備が必要」と指摘する。
県看護協会は8月、県や県医師会とともに就職イベントを開く。八田冷子会長(69)は「離職に歯止めをかけるには今、対策を打たなければいけない。地域で状況や事情は異なる。どうすれば就職し、継続して働いてくれるのか考えていきたい」と力を込めた。