鹿児島の特産品店で買い物を楽しむ客船ツアー客=22日、鹿児島市東千石町
鹿児島県内へのクルーズ船寄港が好調だ。2025年の上半期(1~6月)は、統計を始めた07年以降、過去最多となる108回を予定しており、年間で最多だった19年(156回)を上回るペースで推移している。7割近い寄港がある鹿児島市の観光業者らは経済波及効果を実感し、さらなる需要取り込みへ誘客策を模索する。
22日、鹿児島市のマリンポートかごしまに、最大級のクルーズ船「MSCベリッシマ」(17万1598トン)が入港した。乗客は、市内の観光ツアーバスや天文館へのシャトルバスへ次々と乗り込んでいった。
天文館で特産品を扱う「かご市」では今年、ツアー会社と連携して、乗船者カードの提示と一定金額以上の購入で郷土菓子をプレゼントする企画を実施。クルーズ船が寄港しない日と比べ2~2.5倍に売り上げが伸びた。運営する県商工会連合会の鳥丸亮さん(45)は「クルーズ寄港の恩恵は大きい」と話す。
買い物した台湾の姚宗桓さん(47)は「鹿児島の人は親切で、食べ物もおいしい」。鹿児島が初めてという張芊恵さん(47)は「今回は寄港時の1日しかいないけど、次はゆっくり美しい景色や食べ物を楽しみたい」と満喫していた。
新型コロナウイルスの影響を最も受けた20、21年以降、順調に回復するクルーズ船寄港を地域活性化につなげようと、鹿児島銀行(同市金生町)は4月、本店別館ビル(同市泉町)前に大型観光バス乗降所を整備。22日も多くのシャトルバスが出入りした。
ベリッシマ寄港日にあわせ、乗降所前の「よかど鹿児島」は、延べ45の会社や団体が参加する特産品の物販や試食を展開するフェアを開催した。主催する県特産品協会運営の「鹿児島ブランドショップ」では4、5月、海外客数が約2倍に増えた。津田知久事務局長(55)は「バス乗降所の効果。寄港日にはビラ配りなどに取り組み一帯を盛り上げたい」と意気込む。
上半期108回のうち、本港区北ふ頭とマリンポートと合わせた鹿児島港は73回、名瀬港(奄美市)や宮之浦港(屋久島町)といった離島には計35回寄港。下半期には指宿港(指宿市)へ7月11日、約9年ぶりにクルーズ船が入る予定もある。
県PR観光課の蒲地慶貴観光クルーズ船担当参事(51)は「鹿児島市内では回遊性や新たなにぎわい創出などが進み、クルーズ効果が見えてきた。他地域や離島でも受け入れや周遊で経済効果が波及できるよう支援していく」と話した。