発達障害やグレーゾーン児の特性を語る信州大学医学部の本田秀夫教授=14日、鹿児島市のセンテラス天文館
日本自閉症スペクトラム学会会長を務める精神科医の本田秀夫さん(61)=信州大学医学部教授=が14日、鹿児島市のセンテラス天文館で講演した。発達障害や障害傾向のある「グレーゾーン児」の保護者向けに、特性や自立に向けた子育てのヒントを語った。要旨を紹介する。
発達障害がある子どもは、感情の爆発や情緒不安定さが問題になるが、本来の特性ではないことが多い。ほとんどの場合、クラス替えや担任の交代など環境の変化が影響している。変化に戸惑って右往左往している可能性があることに気付いてほしい。
周りのコミュニティーに適応するため特性を隠そうとする人は、うつになりやすい。療育などで、人と目を合わせたり返事をしたりするソーシャルスキルの練習のし過ぎがきっかけになることもある。こういうふうに振る舞えないと、人間失格と思い込むケースがあるからだ。
自閉スペクトラム症(ASD)は共感性が低く、空気が読めないと言われたこともあったが、最近の研究では違う。人の気持ちを常に敏感に感じようとするため、疲れてしまうのだ。
基本的に発達障害の人たちは我慢の塊。一般の人が楽しんで参加していることでも、興味を持てずに我慢していることがある。興味がないのに頑張る生活を続けると、ストレスが強くなり、うつになるパターンも多い。
義務教育を受けている発達障害児やグレーゾーン児の大半は、通常学級に在籍している。平均的な生徒向けの一律のカリキュラムを受けるため、分からない、分かりすぎて面白くない、興味を持てないといった理由で学校になじめなくなる。なじめなくても他の選択肢はほとんどなく、少数派の権利保障が不十分。多様な子どもが同じ場所で、それぞれの方法で学べる環境が必要だ。
自立に向けて、自己決定力と周囲に相談する力を身に付けることが大切。そのために親子で合意形成する習慣を大人になるまで続けてほしい。例えば一日の予定を文字や絵で分かりやすく提案し、本人が決める。拒否する場合は、別の選択肢を示してもらう。
支援者は、少数派の発達障害の人たちと多数派向けにつくられた社会とのつなぎ役になってほしい。一般の人とは物事の楽しみ方が違うことを理解し、サポートすることが重要だ。
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講演会はNPO法人グッジョブサポート(鹿児島市)が主催。保護者や教育関係者など約200人が参加した。