換金狙いか…山間部の道路でグレーチングの盗難相次ぐ 転落や脱輪の危険性、新品なら70万円に「腹立たしい」

2025/07/03 11:52
手前は鉄製のグレーチング。奥の白いふたは補修のため新調したコンクリート製=6月18日、鹿児島市西別府町
手前は鉄製のグレーチング。奥の白いふたは補修のため新調したコンクリート製=6月18日、鹿児島市西別府町
 鹿児島県内で道路脇の側溝を覆う金属製のふた「グレーチング」の盗難被害が相次いでいる。放置すると歩行者の転落や車の脱輪の恐れがあり、道路を管理する自治体がふたを新調するなど対応している。2025年に入り複数の自治体で被害が確認され、県警が換金目的とみて逮捕した事案もあった。被害は全国でも続発しており、政府は換金時の本人確認を義務化する法制定に踏み切った。

 「住民の安全を守る公共財を盗まれ腹立たしい」。鹿児島市道路管理課の黒田信之課長は憤る。市によると5~6月、西別府町、犬迫町、四元町内の計4カ所で37枚盗まれた。グレーチングは鉄製で、長さ約50~100センチ、重さ19.5~38.5キロ。新品を調達する場合は約70万円必要になる。

 現場はいずれも山間部の市道。市は、犯人が人目を避けて車で持ち去った可能性が高いとみている。住民には、不審な車などを見かけた際は警察や市に通報するよう呼びかけている。

 被害認知後、再び盗まれる恐れもあるため、安価なコンクリート製のふたで補修。鹿児島西署に被害届を出した。転落などによるけが人は確認されていない。

 同様の被害は大崎町でもあり、逮捕者も出た。志布志署は6月17日、4~5月に9枚(時価計7000円相当)盗んだとして、60代の男を逮捕した。署は換金目的とみている。町内では4~6月に約40枚(被害額約90万円)盗まれており、町は盗難を防ぐため、塗料で大崎町の「大」と塗り、転売を防ぐ措置を講じた。

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 盗難増加の背景には何があるのか。

 「金属くず」は売却時に本人確認が不要で、換金する際のルールを定める法律は現時点ではない。一部の自治体は独自に条例を定めており、地方自治研究機構(東京)によると、千葉など17道府県が、金属くず買い取り業者に本人確認を義務づけることなどを定めた条例を制定している。鹿児島県は定めていない。

 グレーチングなどの盗難が絶えないことから、警察庁は6月、中古品の買い取り業者に対し、買い取る際の本人確認強化を義務付ける方針を公表した。1万円未満の取引では本人確認を不要としていたが、古物営業法の施行規則を見直し、少額でも必須とする。

 国も規制を強化する。業者に売り主への本人確認を求めることなどを盛り込んだ「金属盗対策法」を6月に成立させ、1年以内に施行する。ただし、対象は銅に限られており、今後は他の金属を対象とすることも検討している。

 グレーチングを「金属くず」として買い取る金属リサイクル業「荒川」(鹿児島市新栄町)によると、相場は1キロ20~30円台で変動し、特に高騰はしていないという。非鉄金属部の中塚茂副部長は「大量に持ち込まれるなど盗品が疑われる場合は速やかに通報する。今の相場で盗む動機になるのも疑問だ」と話した。

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