右折する際、手前から右に寄り対向車線に大きくはみだした車=18日、鹿児島市の玉里自動車学校
アルコールはいかに正常な判断を奪うのか。鹿児島県警は啓発を目的に「飲酒運転体験講習会」を報道機関などを対象に年1回開いている。今年は5月18日に鹿児島市の玉里自動車学校であり、初めて参加した。
運転前、350ミリリットルのチューハイなど4本を約30分かけて飲んだ。呼気中アルコールは1リットル当たり0.4ミリグラム。酒気帯び運転の基準値0.15ミリグラムを上回り、免許取り消しになる数値だ。
教官を助手席に乗せ、約750メートルのコースを周回。S字やスラロームなどを通過し、10分ほどで終えた。
「問題なかったはず」。そう思うや否や「逆走していましたよ」と教官に指摘された。右折レーンに入る際、その数メートル手前から右に寄り、対向車線にはみ出していた聞かされた。写真も見せられ「間違いなく事故を招く」と恐怖を覚えた。
「アルコールによって、不安や恐怖を感じる大脳の辺縁系がまひしてしまう」と、アルコール問題に詳しい森口病院(鹿児島市)の田中大三院長(60)は話す。さらには、共感性も低下するため「他者にどんな危害を加えるかという考えに至らない」という。
今なお相次ぐ飲酒運転について「罰則を強化するだけでなく、酒気を感知したら始動しない車を普及させるなど、物理的に抑制する視点も必要」と指摘する。
飲酒問題に取り組むNPO法人ASK(アスク=東京)が認定する飲酒運転防止インストラクターの大江久則さん(77)=福岡市=も飲酒の危険性を訴える。
例えば、飲食店から運転代行で帰宅したにもかかわらず、車で出掛ける人がいるという。「明らかに判断力が落ちている。飲酒する場所に車で行くことは、飲酒運転の故意が始まっているともいえる」と話す。
「寝たら大丈夫という考えも大間違い」と語気を強める。睡眠中はアルコールの分解に時間がかかるためで、「運転前日は飲まないのが一番。酒を飲む必要があるならば、アルコール検知器を備えるなど自覚を持ってほしい」と語った。