トカラ列島近海で続く群発地震は6月21日以降、震度1以上の有感地震が1690回以上観測されている。過去に1週間~10日程度続く期間はあったが、今回は既に2週間を超えた。専門家は、特異な地形やマグマの影響といった複数の要因を挙げる。
トカラ列島は、東側でフィリピン海プレートが大陸側のプレートに沈み込み、西側で海底のくぼ地「沖縄トラフ」が周囲を押し広げている。鹿児島大学南西島弧地震火山観測所の中尾茂所長は「両側で力が働く特殊な地形」と説明する。
ただし、この地形は沖縄から鹿児島県北部まで広がるため、「こうしたプレートの動きが今回の群発地震に直結しているかは断言できない」と話す。小さな離島で震度計を設置する場所が限られ、詳細な調査が難しいのが実態という。
トカラ列島は、霧島連山や桜島から連なる火山帯でもある。関係機関による一帯の海底調査で、地下10キロより深い地点でマグマの存在が知られているが、中尾所長は、諏訪之瀬島など周辺の火山活動との関連について「非常に考えにくい」と述べた。
京都大学防災研究所の西村卓也教授(測地学)は「マグマが地下の浅い部分で周辺の断層を刺激したり、マグマ自体が岩盤を押し広げながら移動したりすることで、活発な地震活動を引き起こしているのでは」とみる。
今回は震度4や5といった比較的大きな地震が頻発しており、「断層を動かす外的な原動力として、マグマの移動が影響している」と語る。さらに火山活動でガスや水のような流体が断層に入り込んで断層が滑り、地震が起きやすくなるという。
過去にもマグマの移動が影響する地震はあった。1989年には伊豆半島東方沖で群発地震に続き、海底噴火が起きた。2000年の伊豆諸島・三宅島でも群発地震後に噴火が起き、住民が全島避難した。
「三宅島は今回より数倍大きな地震活動で、マグニチュード5以上の地震回数も多かった。直近のトカラ列島周辺の地震活動は低下しているように見える」と西村教授。直ちに海底噴火などが起きる可能性は低いとした。