小山田徹さん
■145年の歴史を重ねる京都市立芸術大学長、小山田 徹(こやまだ・とおる)さん
性や差別、生と死といったテーマを扱うアーティスト集団「ダムタイプ」の創設メンバーが、母校・京都市立芸術大学の学長に就いて3カ月余り。鹿児島市出身の現代美術家は、ピラミッド型の組織と相反する表現を追求してきたが「思いのほか仕事を楽しんでいる。組織をいかに柔らかく、ほぐしていくかを模索している」とほほえむ。
1階にある学長室は、外からも自由に出入りできる開かれた造り。一角にテーブルや本棚を置いて学生や教職員、市民らが集いやすい空間を用意した。「学生との対話が増え、コミュニケーションが豊かになった」と心地よさげだ。
創立145年を数え、芸術系大学としては日本最古。明治の初期、幕末の混乱や遷都で衰退する京都で「人を育てることこそ復興の礎」という考えが醸成され、戦後の復興を経て「苦しいときこそ芸術文化が重要という市民の思いが、この大学を支えてきた」と解説する。
150年に向けて大学の未来の姿を話し合い、共有することが「大きな仕事」だと語る。戦争の歴史を修正するかのような政治家の発言や、自国第一主義がはびこる世界情勢に危機感を覚え「再び戦争が起きるかもしれない。大学や芸術家は、独立性を持って態度表明できる準備を常にしておく必要がある」。
自然災害など非常時、芸術という手段を通じ、どう対応し貢献できるか-。提案できる人を育むのが大学の役割だと考える。京都市に妻子4人、犬2匹と暮らす63歳。