中国の巨大市場が再び開く――国内需要が伸び悩む和牛、トランプ関税で見通せぬアメリカ 日本一の産地は「新たな販路。いよいよだ」

2025/07/12 17:00
中国市場開放に期待する「うしの中山」の荒木真貴専務。約6000頭の肉牛を飼育している=11日、鹿屋市串良
中国市場開放に期待する「うしの中山」の荒木真貴専務。約6000頭の肉牛を飼育している=11日、鹿屋市串良
 中国への日本産牛肉輸出再開のめどが立った11日、鹿児島県内の畜産関係者らは「日本一の鹿児島黒牛を売り込みたい」「巨大市場が開放されればうれしい」と歓迎した。主要な輸出先の米国では、トランプ政権により関税が上がる恐れもあり、「新たな販路になり得る」との声も上がった。

 県内の農林水産物輸出額は、2023年度367億円。牛肉は4割近くを占める140億円で、うち約2割は米国向けだ。県によると、対中輸出はもともと少なかったものの、01年の牛海綿状脳症(BSE)発生以降は完全に途絶えていた。

 県は牛肉を重要品目として輸出拡大を掲げており、県畜産振興課の上山勝行畜産流通対策監は「販路多角化へ一歩前進した印象。中国向けを希望する事業者を支援したい」と意気込む。

 牛肉の国内消費は、人口減や物価高の影響で伸び悩んでいる。近年の健康志向から、霜降り(サシ)の入った高級部位も敬遠されがちだ。一方で、香港などのアジア諸国では和牛が高く評価されており、主に富裕層に人気が高い。

 中でも、中国市場開放を待ち望む声は業界内にもあった。食肉加工処理・販売のカミチク(鹿児島市)の上村昌平社長(37)は、高級部位を主力としつつ「食べ方を提案するなど工夫すれば、赤身部位も手に取ってもらえるはず」と声を弾ませる。

 「畜産農家にとって張り合いが出る」と喜ぶのは、薩摩川内市で繁殖雌牛と子牛45頭を育てる谷山隆信さん(76)。飼料代高騰が経営を圧迫し、国内消費の低迷から枝肉単価も下がる。頼みの米国向けも不透明な状況で「中国で販路が広がれば子牛価格も上がりそう」。

 肉牛約6000頭を飼育する「うしの中山」(鹿屋市)の荒木真貴専務(46)は、「いよいよという感じ」と期待する。ただ輸出を増やすにも、食肉処理場の能力や輸送体制に不安が残る。「国同士での妥結だけではなく、国内の課題にも対応してほしい」と注文した。

 JA県経済連肉用牛課の寺園寿幸流通販売係長(37)は、輸出再開に関する交渉がこれまでも長引いてきた経緯を気に掛ける。「中国の出方次第で状況がどう動くか分からない。引き続き注視していく」と話した。

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