認知症で変わりゆく母、絶望から「いとおしい」――どん底にいた私はSNSの体験談に救われた 「失敗したっていいじゃないか 笑いに変えていこうぜ」

2025/07/20 17:02
母由美子さんと歌を歌う荒金由紀子さん(左)=姶良市東餅田
母由美子さんと歌を歌う荒金由紀子さん(左)=姶良市東餅田
■母親との日々を発信する・荒金由紀子さん(48)姶良市
 アルツハイマー型認知症の母・由美子さん(77)との日々を、3年前からインスタグラムに投稿し、雪だるま式に反響が広がっている。写真や動画をアップし、そのときの思いを率直につづる。「今、介護で苦しんでいる人たちに少しでもヒントになれば」と語る。

 母が認知症の診断を受けたのは11年前。「何で、どうして、と目の前が真っ暗になり、絶望のどん底に落ちた。2、3年間はちゃんと受け止められなかった」

 思えばさまざまな異変があった。一緒に行った旅先で、夜に何度も何度もバッグの中身を確かめた。父がお金を取ったと言い出し、財布がなくなったと警察に届け出て、家の中で見つかったこともあった。

 しっかり者できちょうめんだった母親が、服やお金を散らかし、汚物を拭いたテッシュをポケットに入れる。振り回されてイライラし「机をたたいて大声を出して威嚇(いかく)したこともあった」。母から笑顔が消えていき、父は介護うつで入院を余儀なくされた。

 救われたのは、交流サイト(SNS)上で見つけた介護する家族らの体験談だった。孤立感が和らぎ、対処法も参考になり、「ネガティブな感情がポジティブになっていった」。夫の理解を得て4年前、実家に移り住んだ。

 「いい意味で期待しない。母のペースに合わせていく」ことが徐々にできるようになり、2022年5月の母の誕生日をきっかけに、インスタグラム「tokitotomoni」を始めた。「SNSで救われたから次は私の番と思った」

 認知症の症状である、食べ物以外のものを口にする「異食」の動画は600万再生、鏡の自分に他人のように話しかける動画は100万再生を超えた。

 母の症状は進み、自分の顔も名前も分からず、娘という認識もあやふやになった。そんな厳しい現実を切り取りながらも、写真も動画もどこか明るい。「かわいくて、いとおしくて仕方ない」気持ちが伝わるからだろう。

 インスタのキャッチフレーズは「失敗したっていいじゃないか 笑いに変えていこうぜ」。今は介護が楽しいと思える。「認知症の母との関係を築くのに7、8年苦しんだ。私以外の人が苦しむ時間が少しでも短くなれば」。そんな思いで発信を続けるつもりだ。

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