築き上げた財産を一瞬にして奪い去る「詐欺を許せない」――教師を目指した警察官は、知恵を絞った。住民に寄り添い守る…大人版「いかのおすし」が生まれた

2025/07/22 15:07
詐欺被害を未然に防ぐ「大人のいかのおすし」を考案した坂口洋介さん
詐欺被害を未然に防ぐ「大人のいかのおすし」を考案した坂口洋介さん
■「かお」 詐欺被害防止へ「大人のいかのおすし」を考案した坂口洋介(さかぐち・ようすけ)さん


 前任の鹿児島県警錦江警察署管内で、多額の詐欺被害に苦しむ人の存在を知った。地域交通課長として、防犯に関する不安の声も届いていた。「築き上げた財産を一瞬にして奪う詐欺から住民を守れないか」と頭をひねった。

 誰もが被害者になり得ると理解してもらう難しさは日々の業務でも感じていた。まずは聴覚に訴えようと、子ども向けの防犯標語「いかのおすし」に着目し、それを基に思案した。どれだけ手口が巧妙化しても「相手の言いなりのままATMに『い』かない」「電子マネーを『か』わない」との意識が根付けば水際で守れると考えついた。

 次々と思い浮かぶ中、詐欺の入口ともいえる「うまい話に『の』らない」には思いを込めた。「詐欺は日常生活に突然襲いかかる。標語一つだが、それで被害を防げたら」と語る。

 2019~20年度に県国体局へ出向した経験があり、かごしま国体に向けて交通規制のチラシや資料作りに励んだ。「いかに分かりやすく伝えるか」という学びが標語作成にも生きた。

 日置市で育ち、鹿児島大学教育学部を卒業した。教師を目指した過去もあったが「地域に根ざし、人と触れ合える警察官になって良かった」と話す。交通関係の勤務が長く、今は高速道路交通警察隊で働く。現場では「当事者の声に耳を傾け、事実を見極め、何に困っているかをくみ取りたい」と力を込める。

 鹿児島ユナイテッドFCの大ファンで「理想は全試合観戦」と話すほどサッカーをこよなく愛する49歳。

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