日本政府は「影響ない」と言うが…日米関税合意に地方のコメ農家は懐疑的「本当に影響ないのか」

2025/07/24 06:00
米国向けを含む牛肉の輸出拠点となっているJA食肉かごしま南薩工場=14日、南九州市
米国向けを含む牛肉の輸出拠点となっているJA食肉かごしま南薩工場=14日、南九州市
 相互関税25%の上乗せ分発動を前に日米関税交渉が23日、急転直下で合意した。関税率は15%で決着し、増加見込みの米国産輸入米は主食用米以外に限られるとするものの、鹿児島県内の関係者からは「先行きは分からない」「状況を注視していきたい」といった不安の声が漏れた。

 和牛をはじめとした牛肉は、鹿児島の重要な輸出産品だ。鹿児島市のJA食肉かごしまは2024年度、全国農業協同組合連合会(JA全農)を通じて約500トンを輸出、約3割は米国向けが占めている。交渉を気に掛けていた販売事業部の竹下勝久部長(55)は「急に決まり何とも言えない」と戸惑う。

 米国向けの牛肉の関税率は、低関税枠外の26.4%に4月以降、一律10%が加わり現在36.4%。農林水産省によると、日米合意(15%)を既に上回るため、今後はベースの26.4%に戻る見込み。ただ、実際の輸出量は現地の販促などに左右されるとして、竹下部長は「今後の動きは不透明」と慎重な姿勢を見せる。

 県貿易協会の弓場秋信副会長(77)は「25%での決着も覚悟していたので、ひとまずよかった」と安堵(あんど)する。それでも追加負担に変わりはなく、今後は競争力維持のため輸出側が増額分の一部を負担するケースも考えられる。「米国内で価格転嫁できればいいが、あまりに高くなると、消費者離れにつながりかねない」と頭を悩ませる。

 コメ生産者も状況を注視する。増加するのは無関税のミニマムアクセス(最低輸入量)の枠内にある加工用や飼料用で、日本政府は主食用米には影響がないと説明するが、ライスセンターヒジオカ(湧水町)の肱岡秋則代表(66)は「増えるのは主食用にも使える中粒種米になると聞く。本当に(主食用米に)使われないだろうか」と懐疑的だ。

 県は4月以降、中小企業向けの金融相談窓口を設置し、事業者へのヒアリングを続けている。総合政策課は「現時点では詳細が分からない。情報収集に努め、県内事業者の状況を把握し、国の動向も注視しながら対応していく」とした。

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