編み物ブームを受け、関連用品の売り上げが2倍になった=鹿児島市の「手芸のまきの天文観店」
若者を中心に編み物がブームになっている。鹿児島県内の手芸店などでも客層が広がり、売り上げが伸びている。編み方を紹介する動画が普及し、好きなアニメやアイドルを応援する「推し活」の広がりが背景にあるようだ。
平日の午後、手芸のまきの天文館店(鹿児島市)では、さまざまな色や太さの毛糸を前に、10〜60代の女性が品定めしていた。
店を運営するまきの商店の牧野卓也社長(40)によると、昨年冬から若者の来店が目立つようになった。毛糸や編み針などの売り上げは平年の2倍になり、人気のある韓国メーカーの毛糸約10種類を仕入れ始めた。
ブームの火付け役は、韓国発の女性グループ「ル・セラフィム」の宮脇咲良さん=鹿児島市出身。交流サイト(SNS)に自作の編み物を投稿したことで、興味を持つ人が増えたという。牧野社長は「ここ10年で一番の盛り上がり。女性が大半だが、若い男性も訪れる」と話す。
県内に34店舗あり、全国展開する100円ショップのセリア(岐阜県)でも、昨春から関連商品の売り上げが伸び、昨年12月は前年同月比で7割増えた。担当者は「好きなキャラクターのぬいぐるみの衣装や、“推し”の写真を入れるケースを作っている若者が多いようだ」と分析する。
2月に編み物を始めた鹿児島大学3年の竹尾花凜さん(20)は、編み方をユーチューブで学ぶ。「編み図を読むのは難しそうだが、動画だと分かりやすい」と話す。「時間はかかるけれど、編み目がきれいだと達成感がある。好きな色や太さの毛糸で世界に一つだけの作品を作れるのがいい」
若者が依存しやすいスマートフォンから離れる時間になるとの声も。ぬいぐるみのマフラーを作った鹿大1年の浜田梨緒さん(18)は「編むときはスマホを見ないので、デジタルデトックスになる。無心に手を動かすことでストレス発散もできている」と語る。
編み物歴35年という鹿児島市の女性(67)は「“祖母の趣味”というイメージが変わってきた」と驚く。「今の若者も手作りのぬくもりを感じているのでは。編み物には時代を超えて愛される魅力がある」と話した。