霧島国際ホテルのカウンター。新燃岳噴火後も通常営業を続けている=25日、霧島市牧園町高千穂の同ホテル
霧島連山・新燃岳が噴火し1カ月余り。霧島市牧園の霧島温泉郷(丸尾)の宿泊業者は通常営業しているものの、予約キャンセルなど観光への影響が出ている。火山噴火や一時的に降った灰のイメージが先行し、夏の観光シーズンに入ってもなお、客足は伸び悩む。関係者は「警戒範囲外は安全」とアピールし、誘客に力を入れている。
火口から7キロ弱離れた同市牧園の旅館「ふたり静」では、6月22日の噴火後にキャンセルが続出した。福留啓介代表(43)は7月2、3日の降灰が「とどめになった」と話す。7月の売り上げは前年比3割程度まで落ちた。
さらに、丸尾から約8キロ離れた霧島田口地区での温泉供給停止(24日に解消)と混同され、予約客から「丸尾の温泉は大丈夫か」という問い合わせが相次いだ。「異なる泉源を利用しているので問題なく入浴できます」と丁寧に説明を尽くすが、8月はお盆以外の予約は埋まらない状態だ。
福留代表は、8月1、2日に市商工会青年部牧園支部が近くの霧島温泉市場で開催する「ゆけむりビアガーデン」に期待をかける。2018年の新燃岳噴火時に観光客の減少に歯止めをかけようと始まったイベントだ。「ビアガーデンでにぎやかに楽しむ人たちの様子を発信し、霧島温泉郷がいつも通り営業していることを印象付けたい」と話す。
丸尾地区の霧島温泉旅館協会(会長・霧島国際ホテル林田博総支配人)は、加盟する旅館・ホテル12施設で「しんもえプラン」を8月から展開する。電話予約をした宿泊客を対象に、同市隼人の坂田金時堂の焼き菓子「しんもえ」をプレゼント。独自の特典を用意する施設もある。協会あげて観光客の呼び戻しを図る。
2、3日に温泉街に降った灰はその後の雨などで洗い流されたが、いまだに降り続いていると誤解している人が一定数いるという。林田会長(61)は「どの施設も元気に営業中ということを発信したい」と強調する。
市観光PR課は、海外メディアやインターネット・交流サイト(SNS)で、不安をあおるような映像や表現が流されていることを問題視。明らかな事実誤認があった場合は、記事の訂正や取り下げを求める対応を取っている。
現在、打撃を受けた観光業者への聞き取りを進めており、今後の支援のあり方を検討している。山口清行課長(56)は「観光業は市の基幹産業。麓の温泉地は通常通りの営業を続けている。正確な情報と魅力発信を通じて、より多くの人に夏の霧島を訪れ楽しんでもらいたい」と話した。
■8月1、2日は「ゆけむりビアガーデン」
霧島市牧園の霧島温泉市場で8月1、2日、恒例の「ゆけむりビアガーデン」が開かれる。企画する市商工会青年部牧園支部の福留啓介支部長(43)は「新燃岳噴火で落ち込む温泉街を活気づけたい」と来場を呼びかける。
ビールや焼酎、ハイボール、レモンサワーの飲み放題で2500円。料理は地元飲食店5店が出店する。足湯前の広場に約200席を用意する。1日は高千穂小学校金管バンドや霧島九面太鼓、2日は地元の音楽バンドが会場を盛り上げる。
営業時間は午後6時から。同8時半ラストオーダー。問い合わせは市商工会牧園支所=0995(76)0150。