奄美の日本復帰を描いた創作劇を上演する伊集院高校の演劇部員=26日、香川県高松市のサンポートホール高松
全国高校総合文化祭が26日、香川県で開幕した。高松市のサンポートホール高松で始まった演劇部門には、鹿児島県から伊集院高校が出場。奄美群島の日本復帰を描いた創作劇「朝は明けたり」を上演した。米軍統治下の困難を乗り越える島民を熱演し、「平和な未来の実現を」と訴えた。
物語は、1953年にラジオ南日本(現南日本放送)の局員2人が奄美に密航し、復帰の模様を全国中継した実話が題材。食糧難や失業、機関誌の検閲など険しい道のりの中、運動に奔走した島民の姿を描いた。
決起集会を回想する場面では、米軍の不当な扱いに、署名活動や断食など、非暴力であらがうと宣言した様子を熱演。「むどぅしたぼれ(戻してください)」と叫び、復帰を求める島民の思いを表現した。
全国中継でラジオ局のアナウンサー・岩橋は「一滴の血も流さず、人々の思いが(米軍に)打ち勝ったのです」と泣きながら伝える。岩橋役を演じた2年、小梁川颯さんは「身の危険の不安に揺れながら、奄美の誇りを胸に戦い続けた島民の葛藤が伝わったら」。
脚本は、南日本放送制作のラジオドラマに着想を得て、顧問の上田美和教諭(53)が手がけた。戦後80年が経過し、奄美が米軍統治下に置かれた過去を知らない世代が増えたと実感。「平和な暮らしが当たり前じゃないことを忘れないで」と書き上げた。
劇中で使われた島口(方言)を教えた保宜夫さん(83)は、名瀬小6年時に復帰を経験。会場で観覧はできなかったが「当時の苦悩と歓喜を思い出した。若者が歴史を語り継いでくれた」と感謝した。
審査結果は28日発表される。鹿児島県勢は26日、自然科学や囲碁など計4部門に参加した。