定例記者会見で辞任の意向を表明するJA全中の山野徹会長=1日、東京・大手町
全国農業協同組合中央会(JA全中)の山野徹会長=鹿児島県中央会会長=は1日の定例記者会見で、任期途中の来年3月に会長を辞任する意向を明らかにした。業務管理のシステム開発失敗による損失発生などを理由に挙げた。
システムはJA全中が開発し、2024年から各地の一部農協で使われているが、運用コストが当初の見込みより大幅に膨らむことが判明した。損失は200億円規模とみられる。導入した農協は別のシステムへの変更を進めており、移行に時間がかかれば損失も拡大する見通し。
山野会長は辞任の理由を「全中の刷新プランや事業損失の処理の問題、役員の責任の問題を含めて一定のめどがついたことから判断した」と説明。刷新プランを決定するのが来年3月の臨時総会で、後任選びにも相応の時間を要するため、この時期になると説明した。
事業損失に関しては「強い危機感を持っている」とし、引責辞任かどうかの受け止め方は「お任せします」と述べるにとどめた。任期を5カ月残しての辞任となり、JA全中は交代の手続きを前倒しで進める。
山野氏は23年8月の通常総会で会長に選ばれた。任期は3年で、鹿児島県からの会長就任は初めてだった。会長選では食料安全保障の確立と自己改革の促進、経営基盤の確立・強化を3本柱に掲げた。
山野氏は大崎町出身。JAそお鹿児島組合長を経て17年にJA県中央会、県厚生連などの会長になり現在3期目。
JA県中央会出身の野村哲郎参院議員(鹿児島選挙区)は、営農指導員からスタートした山野氏の経歴に触れ「論理的で現場にも明るい会長だった。全国の農協にとって大きな損失だ」。自民党農林族トップの森山裕幹事長(衆院鹿児島4区)は引責の経緯を踏まえ「コメントは差し控えたい」と気遣った。
JA県経済連の柚木弘文会長は「出処進退を決めるのは本人だから仕方ない。個人的には、システム開発失敗の損失を埋める対策をしていくと期待していた」と受け止める。