「令和の米騒動」の救い手になるか――高温耐性米「あきの舞」に鹿児島県内の農家が熱い視線 種もみの供給追いつかず

2025/08/03 07:00
「あきの舞」の生育状況を確認する徳留和樹さん=7月30日、鹿児島県さつま町二渡
「あきの舞」の生育状況を確認する徳留和樹さん=7月30日、鹿児島県さつま町二渡
 厳しい暑さが続く鹿児島県内のコメ生産現場で、高温に強い県育成新品種「あきの舞」に注目が集まっている。2025年産から一般栽培が始まり、昨夏からのコメ不足で主食用米の重要性が増す中、増産への貢献が期待される。一方で、苗作りに必要な種もみの供給が追いつかず、希望者が十分に作付けできないケースも見られた。

 あきの舞は、県農業開発総合センターが13年から開発に取り組み、交配や選別を重ねてきた品種。23年に県奨励品種に登録された。猛暑で粒が白濁し、等級が下がる高温障害に耐性があるのが特長。県内の主力品種「ヒノヒカリ」と比べ、食味は同程度で収量は1割ほど多いとあり、興味を持つ生産者は多い。

 さつま町の10.5ヘクタールで稲作に励む徳留和樹さん(42)は今季、ヒノヒカリ7ヘクタール、あきほなみ3ヘクタール、あきの舞0.3ヘクタールを作付けした。あきの舞の導入は、高温の影響でここ数年、ヒノヒカリの品質が落ちたため。7月30日時点で生育状況は順調といい、「食味や取引価格が上々なら、来季以降増やしたい」と話す。

 ただ今季は当初、1ヘクタールでの作付けを予定していたが、JAが配布する種もみの量が足りなかった。同町全体でも、申し込みに対する配布状況は3割にとどまる。徳留さんは「温暖化で今後も需要が増えるだろう。作付け計画を立てる上でも来季分の種もみの量は早めに知りたい」と求めた。

 全国のコメの生産を巡っては、高温障害の発生で23年産米の流通量が減り、昨夏の品不足「令和の米騒動」と、現在も続く価格高騰の一因になった。コメ価格高騰で生産意欲が高まる一方、各産地で高温対策が課題となる中、県内ではあきの舞に申し込みが相次いだとみられる。

 県農産園芸課によると、あきの舞の栽培面積は今季300ヘクタール。並行して種もみも生産しており、29年産は2000ヘクタールを目標に掲げる。町田孝男課長は「今後、計画的に種子を生産していく。生産者の所得向上にもつながるので、来年以降の作付けを検討してほしい」と呼びかけた。

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