空前の抹茶ブームに好調なブリ…ほぼ無税から「15%」に トランプ関税発動で日本一の生産地は試行錯誤

2025/08/07 11:34
荒茶生産量の日本一達成を記念して行われた感謝祭=3月29日、鹿児島市中央町のアミュ広場
荒茶生産量の日本一達成を記念して行われた感謝祭=3月29日、鹿児島市中央町のアミュ広場
 トランプ米政権の日本に対する15%の「相互関税」が7日から発動する。関税率は公表当初の25%からは下がるものの、4月に課された一律10%からは引き上げられる。鹿児島県内の農林水産関係者は「まずは影響を見極めたい」としつつ、情勢が一変する米国市場向けに、経費削減や販促強化といった試行錯誤を進める。

 県が7月下旬に発表した2024年度の農林水産物輸出額は470億5200万円と過去最高額。うち米国は、5割強の236億9300万円を占める「お得意さま」だ。ただ、これらの数字は10%の相互関税が課される前。米国向けが好調な養殖ブリや緑茶、酒類などはほぼ無税だった。

 輸出の7割近くが米国向けという養殖ブリ生産日本一の東町漁協(長島町)の山下伸吾組合長(65)は「新たな関税がどのように影響するのか」と気をもむ。一方で、最近は韓国向けが伸び、中国では日本産水産物の輸入再開手続きが進む。「米国向けが多少減っても生産は維持できる」と販路の多角化を見据える。

 水産物加工のグローバル・オーシャン・ワークスグループ(垂水市)も、総売り上げの約25%は米国向け養殖ブリが占める。増永勇治代表(56)は「購買してもらえるよう努力するのみ」。関税の影響を少しでも抑えるため、「積載量を多くして在庫期間を短くするなどして経費を下げる」と輸送面で工夫する考えだ。

 日本食ブームから米国や欧州連合(EU)では抹茶需要が高まり、県内の茶の輸出額は前年度比95%増と急伸した。特に抹茶の引き合いが強く、供給が追いつかず、市場では価格が高騰している。さらに今後は15%の関税負担が加わる。

 抹茶や緑茶を輸出する特香園(鹿児島市)は、輸出分の売り上げの約半分が米国向け。桒畑政茂社長(53)は「足元では茶価高も課題。相互関税が加わり、長期的には他国産への切り替えや消費減などへの影響が出そう」と警戒する。

 本坊酒造(鹿児島市)は、ウイスキー輸出の4割が米国向け。日本産ウイスキーブームで購入していた消費者が、最近は価格に敏感になってきたと感じる。「富裕層や愛好家に的を絞り、地道なマーケティングをするしかない」と本坊和人社長(71)。米国の代理店とは、負担割合や価格転嫁について検討している。

 一方で、牛肉は上乗せされていた一律分10%がなくなり、26.4%に戻る。ナンチク(曽於市)の担当者は「ホッとした」と安堵(あんど)する。米国向けは高級部位ロイン系が主力だが、中国系飲食店の火鍋で使うスライス商品の需要が増えている。「多様な部位の販売に力を入れる」と意気込む。

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