カムチャツカ半島付近を震源とする地震の津波注意報を受けて避難した養護老人ホーム宝寿園の入所者=7月30日午前、鹿児島県志布志市文化会館
最大震度6弱の日向灘地震を受け、初の南海トラフ地震臨時情報が発表されてから8日で1年がたった。鹿児島県内では津波避難施設の整備も進むが、国の被害想定では、早期避難で犠牲者を大幅に減らせる。日頃の備えと県民への周知が減災の鍵を握る。
ロシア・カムチャツカ半島付近で起きた巨大地震で、日本の広い範囲で津波警報・注意報が出された7月30日、志布志市は午前10時10分に沿岸部の7728世帯1万4901人に避難指示を出した。養護老人ホーム宝寿園では、避難指示前に高台の市文化会館に避難を始めた。入所者を職員の車に分乗させ、必要な薬やおむつを持ち出した。
避難先で一夜を明かした生活相談員の池田章子さん(56)は「畳での雑魚寝は想像以上に大変だった。簡易ベッドの必要性を語り合い、備えを考える機会になった」と振り返った。
入所者31人が多目的ルームに集まっていたため、避難はスムーズだった。津波到達まで時間にも余裕があった。だが南海トラフ地震は、臨時情報が出てから発生すると限らない。政府の地震調査委員会は今年1月、マグニチュード8~9程度の巨大地震が30年以内に発生する確率を「80%程度」に引き上げている。
志布志湾の各市町は、避難が間に合わないケースを想定し、海岸近くに避難タワーや築山を造り、志布志港では県が高台への避難路や表示板を整備中だ。国が3月に公表した新たな被害想定では、鹿児島県の最大被害想定は死者1400人、負傷者6000人。死者の多くは津波によるものだった。
県危機管理課の山本秀則課長は「国の想定では、早期避難の重要さが改めて示された。日頃の備えを理解してもらう取り組みを進めていく」と話した。