「生きた心地しない」寝静まる街を襲う猛烈な雨 市街地は短時間で冠水 崩れた土砂が民家を飲み込む…【鹿児島大雨】

2025/08/09 06:00
裏山が崩れ、倒壊した家屋=8日午後3時半、姶良市蒲生町白男
裏山が崩れ、倒壊した家屋=8日午後3時半、姶良市蒲生町白男
 寝静まる街を、豪雨が襲った。鹿児島県本土は8日、未明から明け方にかけて2回発生した線状降水帯により、時間100ミリを超える猛烈な雨に見舞われた。霧島市や姶良市の市街地は短時間で冠水。各地で川はあふれ、崩れた土砂が民家をのみ込み、道路を寸断した。住民は避難もままならず、「生きた心地がしなかった」と不安を募らせた。女性1人が行方不明となった姶良市の現場では、懸命の捜索が続いた。

 姶良市蒲生町白男で民家の裏山が崩れ、家屋が倒壊した現場では8日、住人の30代女性の捜索が続いた。「倒壊した音に気付かないほどの大雨だった」。近くの住民たちは口をそろえ、「無事でいてほしい」と捜索を見守った。

 市消防本部によると、女性は4人暮らし。当時家にいた60代の母親と30代の妹は救出されたが、女性とは連絡がつかないまま。消防や警察は現場に取り残された可能性が高いとみて、60人態勢で捜索に当たった。

 家屋は大きく倒れ、屋根には捜索のためか大きな穴が開いていた。消防などは家財や崩れた材木を慎重に取り出したり、警察犬も投入したりしながら、女性を探した。活動は夜も続き、時折明かりが見えた。

 この家のすぐ下に住む男性(71)によると、8日未明は雨脚が強く雷も鳴っていた。「家が倒壊する音に全く気付かなかった。地鳴りもなかった」と振り返る。この場所に住んで60年以上たつが、裏山が崩れた記憶はない。安否不明の女性はよく知っているといい、「早く無事に見つかってほしい」と願った。

 現場から約100メートル離れた場所に住む男性(75)も、強い雨の音で倒壊に気付かなかった。午前5時ごろ外に出て消防車両を見たときに初めて知り、「現場の近さに驚いた」。明け方は自宅前の川が氾濫しそうになるほど水位が上がっていた。「一度に降る雨の量が尋常じゃない。明日以降も心配だ」と不安そうに語った。

■「こんな雨初めて」浸水被害に住民落胆/霧島・姶良

 「8・6水害を思い出す」。霧島市国分川内では住宅脇の沢から濁流が流れ込み、住民が泥かきに追われた。近くの無職大西道男さん(80)は「雨が一気に降って怖かった」と振り返る。同市国分敷根でも高橋地区の高橋川が氾濫。小屋が水没した近くの無職中村博一さん(80)は、1993年の8・6水害の時期に同様の被害が出たとし「元々水路が狭い川。拡幅工事をしたがそれでもだめだったか」とうなだれた。

 霧島市福山の中津川実さん(75)は「命の危険を感じるような異常な雨だった」と語る。近くの湊川があふれ、橋が2カ所で崩落。泥流が川岸の人家に流れ込み、福山郵便局は入り口付近まで土砂をえぐられた。

 未明の避難を余儀なくされた人も。同市国分新町の川内秋美さん(80)は就寝中の8日午前3時半ごろ、自宅を訪れた消防隊に促されて避難した。起きると既に床上浸水しており、次第に「水位は腰から胸くらいの高さに上がった」と語った。

 隣町の姶良市加治木では、国道10号に架かる網掛橋のたもとで、信号機とガードレールが崩落。近くで営む弁当店が浸水した小松幸男さん(85)は家族で清掃や片付けに追われた。「信号機が倒れているのを見て驚いた。20代から住んでいるが、こんな大雨は初めて」

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