斜面が崩落し、寸断された道路=10日、姶良市北山
8日の記録的豪雨に見舞われた鹿児島県の姶良市と霧島市では10日も計約3万5000戸で断水が続き、市民生活に大きな打撃を与えている。県によると、霧島市では土砂災害の発生により2地区が今も孤立している。
姶良市北部の北山上集落では8日早朝から9日午後7時ごろにかけて、集落に通じる県道、市道が全て崩落するなどし、約30世帯40人が孤立した。現在は解消したが、県道446号(十三谷重富線)の2カ所が寸断され、姶良市蒲生、霧島市横川方面へ通行ができない。
集落では、山田川が氾濫し川岸が大きくえぐられたほか、田んぼ約3ヘクタールの稲が根こそぎ流された。水道管3カ所が破損し、10日午前まで断水が続いた。有村信行自治会長(69)が応急処置し解消したという。
集落で100年以上続く伝統の迎え火「柱松」は13日に開催予定だったが、中止に。有村会長は「生まれて初めての規模の災害で衝撃を受けている。完全な復旧までには数年かかるかもしれない。前を向いてやるしかない」と語った。
県によると、霧島市では土砂崩れと道路の決壊により、犬飼、手籠川上流の2地区5世帯8人が孤立している。姶良市でも山田飛野地区の1世帯2人が孤立している可能性があり、市が確認を進めている。
姶良市では姶良、加治木地区で計約1万5000戸、霧島市では隼人地域と国分地域の計約2万戸で断水が続いた。いずれも復旧は11日以降になる見込み。
霧島市隼人町小田、和楽器講師の女性(73)は「娘が小学生の子ども2人を連れて帰省しているが、トイレを流せず、調理や食器洗いも不自由している」と話す。洗濯はコインランドリーに行くが、お客が多く、時間がかかる。「早く復旧してほしい」と心待ちにする。
同市の女性民生委員(73)には、知人から「車が水没して給水所まで行けない」と連絡があった。他の人に水を運んでもらうよう頼んだという。「高齢者も多い。給水所に行けない人のために、配ってもらえるとありがたい」と話した。
■11日昼にかけて線状降水帯の恐れ
九州南部は11日昼前にかけて、線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性がある。鹿児島地方気象台は10日午後2時半、予測情報を発表した。土砂災害や浸水、河川の増水や氾濫に厳重な警戒を呼びかけている。
日本海に停滞する前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、県本土と種子島・屋久島地方は11日、大気の状態が非常に不安定となる。11日に予想される1時間雨量は多い所で、薩摩と大隅50ミリ。11日午後6時までの24時間予想雨量は薩摩250ミリ、大隅180ミリ。
九州北部では10日、線状降水帯が相次いで発生し、1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降った。8日に大雨特別警報が出た霧島市などでは、これまでの大雨で地盤が緩んでいる所がある。