稲作の常識が変わる? 「水田に苗」じゃなくて「乾田に種もみ直播き」――低コスト、低労力の実力は? 超早場米産地・種子島で初収穫

2025/08/15 18:07
直播き農法で栽培されたコメの収穫作業=中種子町野間
直播き農法で栽培されたコメの収穫作業=中種子町野間
 鹿児島県中種子町の種子島農業公社は今年、乾いた田んぼに種もみを播(ま)く「乾田直播(ちょくは)」によるコメの試験栽培に取り組んでいる。8月に初めて収穫した超早場米コシヒカリは、歩留まりは低かったものの、外観、味ともに上々の出来。生産現場で、農家の高齢化や人手不足、耕作放棄地が課題となる中、手間を省ける直(じか)播き農法に期待を寄せる。

 同公社によると、2月下旬に同町野間のほ場27アールで、乾いた土を耕して種もみ約10キロを散布。農機で土を適度に締めて固める「鎮圧」後、5月に水を1回張って自然に蒸発させ、6月下旬~7月下旬は水を張った状態にした。稲は順調に生育し、8月4日収穫した。

 農産物検査員による等級検査では、水分含有率は15.5%で外観もよく1等米の基準をクリア。味についても試食した同公社の関係者から「普通のコメと比べても遜色ない」と好評だった。収量は約690キロ。10アール当たり256キロで、同町における例年の超早場米と比べ6~7割。米粒が小さいことなどが理由とみられ、今後の検討課題となった。

 乾田直播は農作業の軽減に加え、水を張る期間が短いことからジャンボタニシ防除にも効果的という。一方で、雑草対策や栽培技術が確立されていないことが課題とされる。政府はコメの増産に向け、補助金で普及を支援する方針を固めている。

 同公社は8月末に専用農機を導入し、同じ田んぼで乾田直播の二期作試験にも挑戦する。近くでは飼料用米の乾田直播栽培も試しており、ノウハウの蓄積を目指す。長田勝彦事務局長は「手間や費用が軽減されれば、新規就農も後押ししやすい。種子島の稲作を守るため、早く直播き技術を確立させたい」と話した。

 ◇乾田直播とは 乾いた田んぼに種もみを播いて育てるコメの栽培方法。ビニールハウスなどで育てた苗を水田に植える一般的な農法とは異なり、育苗や田植えの手間が省け、コストも抑えられる。農林水産省によると、全国の1万9678ヘクタール(2023年産)で採用されており増加傾向にあるが、全国のコメ栽培面積に占める割合は約1.5%にとどまる。水を張った田に種を播く場合は湛水(たんすい)直播と呼ばれる。

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