〈幅は1.5メートル〉男性が転落した市道脇の水路。時間帯によっては高温の温泉水が流れる=16日、指宿市大牟礼3丁目
鹿児島県指宿市大牟礼3丁目の市道で6月下旬、高温の温泉排水が流れる水路に市内の男性(36)が転落し、全身にやけどを負って死亡する事故が起きていたことが16日までに分かった。助けようと水路に入った兄と近隣の男性も、両足に2週間〜1カ月のやけどを負った。
亡くなったのは同市十町の飲食業男性。事故は6月21日未明に発生した。家族によると、男性を降ろしたタクシーの運転手が転落に気づき、知人を介して男性の兄に連絡。兄が駆け付けたところ水路にあおむけに倒れており、すでに意識はなかったという。男性は病院に搬送され、約10日後に死亡した。死因は熱傷と熱水暴露による多臓器不全。
市によると、水路は深さ約1メートル、幅1.5メートル。雨水の他、市営を含む温泉施設や家庭の源泉からあふれた湯が流れ込んでいる。水温は時間帯や潮位などによって変わるとみられ、後日、市が赤外線温度計で測った水面は55〜60度だった。水路沿いには高さ0.8メートルのガードレールがある。
市土木課は事故を受け、8月上旬から現場の水路沿い約200メートルに高さ1.1メートルの転落防止柵を設置している。市内には温泉水が流れ込む水路が複数あり、1994年には別の場所で高齢者がやけどを負い死亡する事故も発生している。市は「危険箇所の把握や注意喚起の看板設置など、対策を進めたい」としている。
水難事故の未然防止や調査をする水難学会の斎藤秀俊理事(長岡技術科学大学大学院教授)は「指宿市は他の地域と比べて、自然に湧き出す温泉があまりにも多量で対策は難しい」と指摘する。理想は柵などによる物理的な遮断だとした上で、「過去の事故をあいまいにしていることが課題。住民が共通認識を持てるよう転落事例をリスト化し、公表して注意を呼び掛けるべきだ」と強調した。
男性の両親は取材に対し、「地元でも、大やけどを負うほどの熱湯が流れていることを知らない人は多い。周辺は通学路にもなっており、二度と事故が起こらないように対策をしてほしい」と話した。