記者の質問に答える自民党の森山裕幹事長=8月5日、東京・永田町
参院選敗北に伴う自民党鹿児島県連の会長人事は20日、森山裕会長の続投で落ち着いた。4日の会合で辞意が示されたが、後任案を巡って県連内が混乱し、地域支部などから続投要請が相次いだ。背景に後継者不足の課題が垣間見える。
「厳しい状況だからこそ一致団結できる体制を」。後任の会長候補に挙がった三反園訓氏(衆院2区)は4日の会合後すぐに森山氏と面会し、続投を要請した。その後は県議団のほか、地盤の衆院4区内を中心とする22の市町村支部からも続投の申し入れがあった。
2010年から県連会長を務める森山氏は20年、知事選で推薦した当時現職の三反園氏が敗れた際も辞意を示したが、周囲に慰留され続投した経緯がある。歴代会長を見ても連続在任期間は二階堂進氏の4年が最長で、近年は党幹事長でもある森山氏への“依存”が際立っている。
本来ならば衆院議員を6期務めた元農相の小里泰弘氏らが後継の候補になり得るが、昨年10月の衆院選で落選。今回名前が挙がった三反園氏も今年1月に自民党入りしたばかりで県連内に波紋が広がった。
他県連では国会議員ではなく県議が会長を務める例もある。鹿児島県連関係者の一人は「県議団も一枚岩とは言えず、全体をまとめるには国会議員が重しとなる」と話す。
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自民党鹿児島県連の森山裕会長の続投方針が決まった20日、要請した県議団からは安堵(あんど)の声が聞かれた。県連所属国会議員が4人に減り、後任に今年1月入党した三反園訓衆院議員の名前が挙がる中、党勢の立て直しが優先された格好だ。参院選鹿児島選挙区の議席を落とした現執行部への責任論は宙に浮き、「茶番だ」との見方もあった。
県議団の大久保博文会長は「県内の党員や地域支部から続投を求める声が寄せられた。要請が受け入れられ、今後の県連再生が期待できる形になった」と語る。6月の定期大会で決定した体制が維持されることとなり「県連一丸でまとまらなければならない時期。県議や地方議員の役割も相対的に高まってくる」とした。
県連女性局長の中村素子県議は「激動の混乱期をまとめきれるのは森山会長しかいない。職責を果たしながら次期衆院選に向けた軌道修正を進めていってほしい」と強調。県議会の園田豊副議長は「党の厳しい状況の中で、豊富な経験を生かしてもらえたら」とした。
一方、森山氏本人はこれまで、自身の進退や辞意を明言していない。「続投は当初から織り込み済みだった」と見る向きもある。
県議の一人は「本人は辞める気持ちはなかったのではないか。茶番だ」。別の県議は「入党したばかりの三反園氏をトップに据えれば組織はまとまらない。執行部の責任を問う声より人事案への拒否感が強かった」とする。後継者不足は解消されておらず「次期選挙への不安が残る結論。県連の将来的な体制を真剣に考えなければ」と指摘する県議もいた。