タクシーを待つ人で混雑する乗車場=21日午後7時すぎ、鹿児島市の鹿児島中央駅前
鹿児島県薩摩川内市の西にあった熱帯低気圧が台風12号へ急変した21日、大雨被害を受けたばかりの姶良市や霧島市では避難する住民が相次ぎ「いい加減にして」「気がめいる」と疲労感をにじませた。急に出現した台風に伴う大雨で交通機関は乱れ各地で浸水被害も出た。ゆっくりとした速度で県本土を横断するため総雨量が増える恐れがあり、県民からは不安の声が上がった。
8日の大雨で大きな被害が出た姶良市や霧島市では避難する人が相次いだ。
姶良市は、午後2時に高齢者等避難を発令し14カ所で避難所を開設、2時40分には避難指示を発令した。
脇元地区公民館に母親(79)と避難した近くの女性(52)は「8日は家の前まで冠水した。移動できなくなると困ると思い早めに避難した。被害が出ないことを祈る」と不安そう。
「家の中の泥出しも終わっていない。それでまた台風なんて。いい加減にしてくれ」。8日の雨で自宅が床上浸水した姶良市平松の男性(52)は嘆いた。
霧島市の隼人農村環境改善センターに孫娘と避難した近くの女性(77)は「今年の雨はしつこく気がめいる」と疲れた表情。8日の大雨では夜中に自宅まで水が迫ったといい「ラジオで大雨情報を聞きながら夜を越したい」と話した。
1時間120ミリの猛烈な雨を観測したいちき串木野市の荒川交流センターには、満園福枝さん(84)が高校3年の孫と避難。2人は泥水の流入で自宅裏の田畑が見えないことに気づいた。高台に逃げようと玄関に向かうと、土間が20センチほど浸水しており「気が動転した」と振り返った。
枕崎市の市民会館に身を寄せた近くの60代男性は「急な台風発生だったから驚いた。台風の動きが遅いので雨が長引かないか心配」と気をもんだ。
大雨の影響で県内の交通機関は乱れた。鹿児島市の鹿児島中央駅ではタクシーや迎えを待つ客が列を作った。アルバイト帰りだったいちき串木野市の大学生橋口愛菜さん(22)はJRが運行を見合わせたため、親の迎えを待っていた。「とても困る。早く復旧してほしい」