8日の大雨で近くの網掛川から土砂が流れ込み、稲が枯れ始めた田んぼ=20日、姶良市加治木町小山田
8日に記録的な大雨に見舞われた姶良、霧島両市では、田んぼへ土砂が流入したほか、取水施設が崩壊したり用水路が埋もれたりして水を確保できなくなるといった被害が相次いだ。21日の台風12号では南さつま市も冠水するなどした。各地で復旧作業が進められるが、実りの秋を前に収穫を危ぶむ声も聞かれる。
姶良市加治木町小山田の農業有島弘さん(72)は近くの網掛川が氾濫し、水田140アールのうち30アールが被害に遭った。土砂に埋まった稲は枯れ始め、田んぼのあちこちに流木やごみが残されたまま。「一見被害がなさそうな所も流木などが隠れている場合があり、そのまま収穫時にコンバインを入れると機械が壊れてしまう」と先の見えない復旧作業に頭を抱えた。
県によると、8日の大雨による稲の被害面積は74.6ヘクタール、被害額は4557万円で、それぞれ農作物の8割以上を占める(25日時点)。水田に土砂が流れ込んだり、のり面の崩壊で稲株が流されたりした被害が報告されている。
大雨で崩壊した姶良市深水の農業用取水施設では25日、仮設の給水管が設置され、ポンプで川からくみ上げた水の用水路への供給が始まった。
49ヘクタールの田んぼに水を供給できなくなっていたため、市耕地課は「一歩前進」としながら、「用水路にたまった土砂もあり、水が全体に行き渡るか不透明な部分がある。経過を注視していく」としている。近くで72アールの水田を持つ男性(70)は「穂が出る今が一番水がほしい時期。早く復旧してほしい」と話した。
霧島市の松永、中台、宮内原の幹線的な用水路では、土砂流入により合わせて約750ヘクタールに水を供給できなくなった。市耕地課によると、応急工事を終え、25日までに通水を再開した。
田んぼに水を張るのが一般的な時期に供給できなかったことについて、JAあいら農産課の堂園公庸課長は「米に亀裂が入る『胴割れ』や未熟米が多くなる可能性がある」と生育への影響を懸念した。
南さつま市が25日までにまとめた農作物の状況によると、早期米4ヘクタール、普通期米52.4ヘクタールの計56.4ヘクタールが被害を受けた。
同市加世田内山田の米農家竹ノ内文敏さん(68)は先週末、水路に流れた土砂の除去作業に追われた。稲穂が実るための花が咲き出したころだったという。「稲の根元にたまった泥のせいで十分育つか心配。今年の収穫が難しいところがあるかもしれない」と気をもんだ。