「不当判決」と書いた紙を掲げる原告ら=27日、福岡市の福岡高裁
福岡高裁が九州電力川内原発1、2号機(薩摩川内市)の設置許可取り消しを認めなかった27日、訴えを起こした住民らは「司法の良心はどこにいったのか。火山のリスクを軽視している」と落胆した。主文を1分ほど読み上げて閉廷した裁判長に対し、「直接説明を聞きたかった」と怒りもあらわにした。一方、九電や地元経済界は「妥当な判決」と評価した。
「控訴をいずれも棄却する」。松田典浩裁判長は主文を1分ほどで読み上げ、法廷を出た。傍聴席からは「恥知らず」「(要旨を)読み上げないのか」と怒号が飛んだ。
薩摩川内市の鳥原良子さん(76)は言い渡しの際、原告席でうなだれるように聞いた。控訴審は2019年以来、計8回の口頭弁論が開かれ、「丁寧に話を聞いてくれたと思っていた」。判決後、裁判所前で厳しい表情を浮かべながら「司法の独立と良心はどこへ」と書かれた紙を掲げた。
報告会で弁護団は「原発稼働を容認する審査を追認した判断。思考停止に陥り安全と盲信する安全神話そのもの」と指摘。海渡雄一弁護士は「福島の事故を引き起こした規制の劣化が再び起きている」と憤った。
川内商工会議所の橋口知章会頭(69)は「経済界にとってありがたい判断をしてもらえた。ほっとした」と安堵(あんど)の表情を見せた。福島第1原発事故後、「稼働するための基準が厳しくなり、以前よりも安全性は高まっている。それが認められた結果ではないか」と推測した。
福島事故後、川内原発は約4年間運転を停止し、地域経済に大きなダメージがあったと振り返る。「宿泊や飲食、交通など原発の効果は裾野が広く、周辺地域にも及ぶ。今回の判決で、商工会議所の会員も安心して事業に取り組める」
当事者として裁判に参加した九電は「主張が認められた妥当な判決。今後ともさらなる安全性・信頼性向上への取り組みを自主的かつ継続的に進め、原発の安全性確保に万全を期す」とのコメントを出した。