「映画は横田慎太郎さんを深く知るきっかけになればいい」と話す主演の松谷鷹也=18日、鹿児島市の南日本新聞社
プロ野球・阪神でプレーし、2023年に脳腫瘍のため28歳で亡くなった横田慎太郎さん(日置市出身、鹿児島実業高校卒)の生涯を描く映画「栄光のバックホーム」が、11月全国公開される。横田さんを演じた俳優の松谷鷹也(31)が南日本新聞社を訪れ、撮影の終了を報告した。松谷は「横田さんの生き方は心に響くはず。多くの人に知ってほしい」と熱を込めた。
横田さんは14年、ドラフト2位で阪神に入団。強打の外野手として期待され、16年に1軍デビューを果たした。しかし翌年脳腫瘍が見つかる。2度の手術とリハビリを経て1軍復帰を目指したが、球が二重に見えるなどの後遺症に悩まされ19年に引退。2軍戦で開かれた引退試合ではセンター前の打球をノーバウンドで本塁に返球してアウトにし「奇跡のバックホーム」と呼ばれた。
横田さんの著書「奇跡のバックホーム」と、闘病を支えた母、まなみさんの視点で書いたノンフィクション「栄光のバックホーム」を元に映画化した。松谷とダブル主演となる鈴木京香が、まなみさん役。元プロ野球選手の父・真之さん役を高橋克典、掛布雅之役を古田新太が演じるなど、ベテランが脇を固める。
プロを目指し大学まで投手として活躍した松谷は、CGや編集なしで「バックホーム」を再現できるとして白羽の矢が立った。父が元プロ野球選手、185センチを超える高身長など横田さんと共通点が多い。
約4年前に主演が決まってから講演を聴いたり、入所中のホスピスを訪ねたりと交流を重ねた。映画化を喜び、使っていた外野手用のグラブを贈られたという。松谷は「周りの人や物を心から大切にする人柄に触れてあっという間にファンになった」と振り返る。
24年開始の撮影前、プロらしい体にするため筋トレなどで体重を10キロ以上増やし、遠投できるように肩をつくった。「(横田さんが乗り移り)自分の体を使ってほしいという思いで臨んだ。一心同体の気持ちだった」
奇跡のバックホームは、エキストラとして集まった横田さんのファンの前で、形見のグラブを使って演じた。「ファンから温かい言葉をかけられ、今も横田さんが愛されていると実感した」と話す。「横田さんは生前、目標を持つことの大切さや、諦めない心などを訴えた。こんなに素晴らしい人がいたことを忘れないでほしい」と呼びかけた。
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「栄光のバックホーム」は11月28日公開。鹿児島では鹿児島市のTOHOシネマズ与次郎、天文館シネマパラダイスで上映される。