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家族とは普通に話せるのに、不安や緊張から学校など特定の状況で言葉が出ない「場面緘黙(かんもく)」。人見知りやおとなしい性格と勘違いされやすく、必要な支援が遅れる場合がある。症状の改善には周囲の理解や安心できる環境づくりが大切だ。
「話そうとすると、喉がぎゅっとなってしゃべれない」。鹿児島県霧島市の小学4年の女子児童は、小2のとき大規模校に転校したことがきっかけで発症した。
家ではよく話すが、学校では仲の良い友人としか会話ができない。「話しかけてほしいのに、返事ができない」といった苦しさを抱えている。「一人になりたいわけじゃない。どうしたらみんなに分かってもらえるのだろう」と母親に打ち明けたこともある。
今夏、学童保育の指導員の耳元であいさつができるようになった。母親は「本人の気持ちをたくさん聞きながら、一緒に乗り越えたい」と話す。
場面緘黙は、幼いころに発症しやすく、幼児や児童の0.2~0.7%に現われるとされる。生まれつき不安や恐怖を感じる脳の「扁桃体(へんとうたい)」が過敏に反応する人に多いという。
「特定の人と小さい声で話す」「音読など決まったセリフは話せる」など状態はさまざま。発話だけでなく感情表現ができにくい子もいる。1カ月以上症状が続き、社会生活に影響が出ることなどが診断基準になる。
ただ、周囲の理解は十分に進んでいない。友人にからかわれ、うつ病や不登校などの2次障害を引き起こすケースもあるという。
場面緘黙などの子どもを支援する薩摩川内市の療育事業所「ことばの教室 そらまめキッズ」は、2022年から説明会を開いて啓発活動に取り組んでいる。8月22日、同市で集いがあり、保護者や教員ら45人が基礎知識を学んだ。
講師を務めた言語聴覚士中村未来さん(25)は「場面緘黙の子は『わざと話していない』と勘違いされることがある。返事やあいさつがなくても責めないで」と呼びかける。「症状の改善には周囲の理解と寄り添う姿勢が欠かせない。本人の意思を尊重しながら、学校などと連携し、不安の低い場面から徐々にできることを増やしてほしい」と話した。